■いかなるときもオスカルをサポート「片目くらいお前にくれてやる」
アンドレは何度も体を張ってオスカルを守っているが、象徴的なシーンとして挙げられるのが片目を失った時だろう。
貴族から盗みを働く黒い騎士を捕まえるため、アンドレを偽物の黒い騎士に扮装させおびき寄せる計画を立てたオスカル。しかし返り討ちに遭ったアンドレは片目を怪我してしまう。
“ゆるしてくれ、わたしのために…”と謝るオスカルに対し、アンドレは「片目くらいいつでもおまえのためにくれてやるさ」と答えるのであった。
アンドレにとってオスカルは人生のすべてだった。片目くらいくれてやる、というセリフは本心だったのであろう。そんなアンドレの言動に衝撃を受けたオスカルは、部屋を出たあと倒れこんで涙し、後日、黒い騎士を捕まえた際には「わたしのアンドレにしたとおなじようにしてな!」と、冷静さを失う姿を見せていた。
このシーンをきっかけに、オスカルのなかでもアンドレが特別な存在に変わってきたと思われる。
■愛しすぎて暴走も!? 「主よ我を地獄へ!!」
アンドレはオスカルを愛するあまり、間違った方向へ行きそうな時期もあった。オスカルは同じ貴族のジェローデルから求婚を受けており、アンドレは平民の自分とオスカルは決して結ばれないことをあらためて悟る。そして絶望したアンドレは小説の影響も受け、“死によって結ばれる愛”を選ぼうとするのだ。
毒入りワインをオスカルの部屋に運び、ともに死のうとしたアンドレ。しかしすんでのところで我に返り、ワインを奪い返すのだ。
その後アンドレはオスカルは自分にとって生きているだけで素晴らしい存在であることを自覚し、ますますオスカルのことを全身全霊で守っていくと誓うのであった。
当時は階級によって結ばれないことも多く、アンドレのように悩みぬいた人もいただろう。愛するがゆえ、間違った道を選んでしまった恋人たちもいたかもしれない。
しかしこの後2人は劇的に結ばれることとなる。このときに命を絶たなくて、本当によかったと思った次第だ。
幼い頃からオスカルのことを一途に慕うアンドレの想いは揺るがない。作品を読み返すと、こんなに想われたオスカルは本当に幸せな女性だな……と、ちょっと嫉妬してしまうくらいだ。
神戸で開かれる「誕生50周年記念 ベルサイユのばら展」でも、オスカルとアンドレの深い愛情を彷彿とさせる場面が多く展示されるだろう。池田氏の描く情熱的な恋愛模様にどっぷり浸かりたい人は、ぜひ足を運んでみてほしい。