■「チームファウル」の数も変更

「チームファウル」の数も変更されている。チームファウルとは、チーム全体でのファウルの数が一定数を超えると、相手チームにフリースローが与えられるルールのことだ。

『SLAM DUNK』当時は、前後半それぞれ8回目のファウルから相手チームにフリースローが与えられることになっていた。だが、パリ五輪で適用される現在のルールでは、1クォーターで5回目のファウルから相手チームにフリースローが与えられる。

『SLAM DUNK』原作では、チームファウルでフリースローが与えられたという描写はなかった。よって、現在のルールが適用された場合を想像するのは非常に難しいが、桜木、赤木、魚住など、ファウルトラブルの多かった選手たちには影響が大きいルール変更となったかもしれない。

 個人的に、ファウル関連で印象的だったシーンを挙げると、湘北VS山王の試合で桜木が背中を大怪我し、それでも痛みを押して途中交代で入ろうとコートサイドで待っていたとき。ファウルをして「出るなら出ろ」と、桜木をコートに戻したのが流川だった。

 このシーンも、現在のルールに当てはめると“数によっては”山王にフリースローが与えられるため、流川も容易にはファウルができなかったかもしれない。

■ショットクロック&フロントコートまで運ぶ時間もそれぞれ短縮

 プレイ中に課せられる制限時間についても、ルールの変更がされている。代表的なのが、オフェンス側がボールを持ってからシュートを打たなければいけない時間である「ショットクロック」。『SLAM DUNK』作中で、湘北ベンチメンバーがしきりに「30秒!30秒!」と叫んでいたのがこれだ。

 ショットクロックは2001年に30秒から24秒に短縮され、スピードアップが図られている。

 速攻主体の“ラン&ガン”を信条としていた豊玉には関係ないルール変更かもしれないが、インターハイ神奈川予選・陵南戦、流川と仙道、両エースがマッチアップした試合では、仙道がショットクロック30秒ギリギリ使って自らショートを決めたり、パスを出して福田に決めさせたりというシーンもあった。もしも現在のルールが適用されていたら、もっと早いテンポの攻防となっていたことが考えられる。

 またオフェンス側がボールをフロントコート(攻めるゴールのあるエリア)に運ばなければいけない制限時間についても、現行ルールでは10秒から8秒に短縮されている。

 このルールの違いでもっとも影響が考えられるのは、やはり山王のフルコートプレスディフェンスを喰らった宮城だろう。10秒でも大苦戦し、その間山王に16点も与えてしまったのだから、8秒ならなおさらだ。現在のルールだと、湘北奇跡の大逆転もこの時点で潰えていたかもしれない。

 

 今回は『SLAM DUNK』を通して「五輪前に知っておきたいバスケ新ルール」を紹介してきた。

 クォーター制や○秒ルールなど、現ルールでは、よりスピーディーな試合展開が期待される。またファウルの数や名称など、『SLAM DUNK』時代とは大きな違いがあった。

 また、ボールを持って3歩以上歩いてはいけない「トラベリング」には「ゼロステップ」という新ルールが加えられていたり、ボールの所有がどちらのチームにあるか分からない場合に行われていた「ジャンプボール」が「スローイン」になるなど、ほかにもルールの変更はされている。

 これらのルールを頭の片隅に入れておくと、よりこれからのバスケ観戦を楽しめるかもしれない。はじまったばかりのパリ五輪。この記事が役立てば幸いだ。

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