『それいけ!アンパンマン』の映画シリーズ第35作『それいけ!アンパンマン ばいきんまんとえほんのルルン』が公開中だ。
タイトルの通り、今回の主役はアンパンマンの永遠のライバル・ばいきんまん。絵本の中に吸い込まれてしまったばいきんまんがアンパンマンと協力し「絵本の世界」を守るべく活躍する姿が描かれる。
メイン視聴者である子どもたちは、ついヒーローであるアンパンマンを応援したくなるものである。しかし「悪役」のばいきんまんこそ、大人目線で見ると実は見習うべき素晴らしい人間性を持っているように思う。今回は、大人にこそ響くばいきんまんの隠された魅力を紹介したい。
『それいけ!アンパンマン』は、やなせたかしさんの絵本『あんぱんまん』を原作とした1988年から始まったアニメ。悪事を働くばいきんまんに対し、アンパンマンが仲間と協力して最後にはばいきんまんを退治するというのがお約束の展開だ。
まず、本シリーズのヒーローであるアンパンマンと悪役であるばいきんまんを比較してみよう。
アンパンマンはいつも穏やかで、お腹を空かせている人を見かけると躊躇なく自分の顔を差し出すという美しい自己犠牲の精神の持ち主。また人望も厚く、日頃のパトロールの甲斐もあってかどこに行っても慕われている印象だ。
パン工場のジャムおじさんらをはじめとして、カレーパンマンやしょくぱんまんなど味方も多く、顔が濡れたりピンチになったりしても新しい顔に交換すれば無限に復活できる。もちろん性格も優しく、子どもにとっては文句なく、憧れのヒーローである。
対してばいきんまんはどうか。いつもドキンちゃんの思いつきにも似たわがままに振り回されているが、なんだかんだ言いつつも結局はその願望を叶えるために奔走している。基本的に利己主義的な、いわゆる「悪役」らしい性格なのだ。
ばいきんまんの悪だくみの手法は多岐にわたり、オーソドックスな変装から大胆な陽動作戦、自作のメカを徹夜で作ることも珍しくない。
自称天才科学者というだけあって、彼の作るバイキンメカたちは、空飛ぶ乗り物であるバイキンUFOに巨大ロボットのだだんだん、地底戦車のもぐりんなど、移動に特化したものから戦闘に特化したものまで、かなりのバリエーションがある。もちろんアニメで1話限りしか登場しなかったメカも多い。
これほどさまざまな方法でアンパンマンに挑んでいるばいきんまんだが、彼に積極的に協力してくれる人物はいないのが現状だ。よってばいきんまんは日夜一人きりでそのアイデア力を駆使し、アンパンマンに対抗するメカを作っているのだ。