筆者の娘は、普段はスマホに夢中でまったく漫画を読んだことのない女子大生だ。しかし鳥山明さんの訃報をきっかけに「『ドラゴンボール』を読んでみたい」と言い出し、19歳にして初めて『ドラゴンボール 完全版』を読み始めた。
当初は独特の世界観に戸惑っていたものの、天下一武道会が始まるとみるみるうちに『ドラゴンボール』にハマっていった娘。しかしその矢先「もう読まない!」と言い出したことが2回もあった。今回は初めて『ドラゴンボール 完全版』を読んだ娘の「サイヤ人編」の感想を紹介したい。
■9巻で「もう読まない」その理由は“推しの死”
夢中で『ドラゴンボール』を読み進めていく娘。ストーリーは2回目の天下一武道会を迎え、悟空と天津飯の熱きバトルが始まっていた。このころ娘は寝食を忘れるほど熱中しており、筆者もついつい
「明日早いんだからもう寝なさいよ」なんて言ってしまうほど。……懐かしい。こんな光景は昭和や平成初期の時代によく見られたなあと思う。
しかし! 9巻を読み終わった時点で頭を抱え、ショックを受けてしまう。そう、彼女の最大の推しであるクリリンが、ピッコロ大魔王の手下・タンバリンに殺されてしまったのだ。
ドラゴンボールが復活するのは1年後だし、もうクリリンは登場しないものと思い込んだ娘は、ショックのあまり「クリリンが死んだからもう読まない……」と言い出した。思わず「大丈夫、生き返るよ!」と言いかけたが、ネタバレになってしまうので思いとどまった。
その後、娘は本当にぱったりと読まなくなってしまう。しかし私がこれ見よがしに『ドラゴンボール』を毎日読んでいたところ、2週間ほど経ってから10巻を読み始めた。
なんでも「クリリンはいないけど、やっぱり続きが気になる!」とのこと。やはり『ドラゴンボール』は時代を問わず、“続きが読みたい!”という意欲を掻き立てる作品なのだろう。
その後、無事にクリリンが復活したことに大喜び。そして、孫悟飯とミスターポポという新たな推しも加わった。どうやら娘は小さくて丸っこいキャラクターが好きらしい。
■痛々しくてもう読めない…!? サイヤ人編
ピッコロとの戦いを終え「サイヤ人編」に突入すると、娘が深く感動したシーンがあった。ピッコロが悟飯をナッパの攻撃から身を挺して守る、かの有名なシーンである。
「いやあ……ピッコロは悪い奴だから嫌いだったけど、このシーンは……」と、感動のあまり言葉が続かない娘。もちろん筆者も大好きなシーンであり、親子で同じことで感動できたのは嬉しい限りである。
そしていよいよ、ベジータと悟空のバトルが始まった。娘は、界王様のもとで修行をしたのだから、悟空が簡単に勝てると思っていたそうだ。だが、想像以上のベジータの強さに苦戦する悟空。大猿になったベジータが悟空の全身の骨を折るシーンにはひどくショックを受け、2回目の“もう読まない”宣言をする。「読みたいけれど、あまりの痛々しいシーンにつらくなった」とのこと。
思えば『ドラゴンボール』が『週刊少年ジャンプ』(集英社)に連載されていた時期は『聖闘士星矢』や『ジョジョの奇妙な冒険』など、血生臭いバトル漫画も多かった。
そうした作品に慣れていたのか、当時の筆者は『ドラゴンボール』のバトルシーンにはさほどショックを受けなかったように思う。しかし、足を折られたり、子どもである悟飯が攻撃されたりするシーンは、ショック描写に耐性のない令和っ子にとってキツかったのかもしれない。
とはいえ、なんだかんだで好奇心が勝り、娘は再度『ドラゴンボール』を読み進めることとなる。