■絶妙の演技で再現される孤独に戦う少年の心…『どろろ』妻夫木聡

 1967年から『週刊少年サンデー』(小学館)にて連載された手塚治虫さんの『どろろ』は、主人公が数々の魑魅魍魎と戦いながら、奪い取られた自身の肉体を取り戻していくダークファンタジー作品だ。

 2007年には同名の実写版映画が公開されているのだが、本作の主人公の一人であり、妖怪に48カ所の肉体を奪われた少年・百鬼丸を演じたのが妻夫木聡さんだ。

 数々の映画やドラマに出演する妻夫木さんだが、普段演じる爽やかな配役から一変、魑魅魍魎に奪われた肉体を取り戻そうと奮闘する百鬼丸の無感情かつミステリアスな雰囲気を見事に表現している。

 作中では妖怪を打ち倒し百鬼丸が肉体を取り戻す場面も描かれるのだが、その際には原作通り百鬼丸に苦痛が襲い掛かり、あまりの苦しさから悶絶するシーンも。妻夫木さんの迫真の演技は、百鬼丸に襲い掛かる苦痛の凄まじさをまざまざと伝えてくれる。

 原作の百鬼丸が14歳ということから、映画版ではかなり大人びた雰囲気のキャラクターとして描かれたのだが、妻夫木さんの持つ格好良さと孤独に戦う百鬼丸のイメージが見事に融合し、殺伐とした世界を生きる新たな“ダークヒーロー”像を作り上げている。

 もちろん相棒として活躍する柴咲コウさん演じるもう一人の主人公・どろろとの掛け合いも健在で、どろろとのやり取りを通じ徐々に人間味を取り戻していく百鬼丸の内面も、妻夫木さんは絶妙の演技で再現していた。

 名作漫画の“ダークヒーロー”を圧倒的な実力によって具現化してみせた、実力派俳優といえるだろう。

 

 ときに邪悪に、ときに孤独に……実写化された“ダークヒーロー”たちは原作漫画とは一味違うテイストに表現されたものも多い。俳優たちがスクリーンに描く新たな“ダークヒーロー”たちの活躍を、是非ご自身の目で確かめてみてほしい。

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