『こち亀』や『あしたのジョー』、『銭ゲバ』も…実は70年代にもあった漫画原作映画たちの画像
『あしたのジョー』 (実写版) [DVD](Happinet(SB)(D))

 昨今では数多くの漫画作品が実写化されているが、過去に一度実写化されたものが時を経て、別の俳優陣で再度実写化されたというパターンも少なくはない。実は連載当初の70年代に実写化されていた、意外な作品たちについて見ていこう。

■両さんの名前すら決まっていなかった連載初期の一作!『こちら葛飾区亀有公園前派出所』

 1976年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載された秋本治さんの『こちら葛飾区亀有公園前派出所』は、破天荒極まりない警察官・両津勘吉が、笑いあり人情ありのドタバタ活劇を繰り広げるコメディ作品だ。

 少年誌の最長連載記録を打ち立てた長寿作品で、アニメ化、映画化などさまざまなメディア展開を続け、2009年には元・SMAPのメンバーとしても有名な香取慎吾さんが主演のドラマが放送され話題を呼んだ。

 のちの2011年には同様のキャストで実写版映画『こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE 〜勝どき橋を封鎖せよ!〜』が公開されたのだが、実は『こち亀』は過去にも実写映画化されていたのをご存じだろうか。

 時を遡ること34年前。原作漫画と同名の映画が、連載からわずか1年後の1977年に公開されていた。

 気になる主人公・両津を演じたのは、ドラマや映画はもちろん、数々のラジオ、テレビ番組でも活躍していたタレント・せんだみつおさん。当時はまだ『こち亀』が連載間もないころだったこともあり、今となってはメインキャラクターである麗子や本田といった面々は登場せず、オリジナルキャラクターが数多く起用されている。

 また、両津を怒鳴りつけることでお馴染みの大原部長も登場せず、代わりに寺井が巡査部長役になっていたりと、既存のキャラクターもそれぞれ実写化にあたってかなり設定が変更されていた。

 とくに意外だったのが主人公・両津の名前だ。原作の「両津勘吉」ではなく、なぜか「両津平吉」というオリジナルの名前が使用されている。実は公開当時、原作漫画では苗字のみしか登場していないキャラクターも多く、映画化にあたって設定が補完された人物も多いそうだ。

 総じて原作とは異なる“パラレル”的な世界観の一作だが、VHSが発売されて以降、サブスクなどにも登場していないため、かなりレアリティの高い実写化作品だといえるだろう。

■演技のなかに確かに光るキャラクターたちの強烈な個性…『あしたのジョー』

 1967年から『週刊少年マガジン』(講談社)で連載された『あしたのジョー』は、原作担当の高森朝雄(梶原一騎)さんと作画担当のちばてつやさんのタッグが贈る大人気ボクシング漫画だ。

 流れ者の少年・矢吹丈が“ボクシング”を通じて成長し、ライバル・力石徹との死闘を繰り広げる名作漫画で、のちに生まれる数々のボクシング漫画に多大な影響を与えた。

 凄まじい人気から幾度となくアニメ化されてきた本作だが、2011年にはアイドルグループ「NEWS」のメンバー(当時)として活動していた山下智久さんを主演に据えた実写版映画が公開された。

 山下さん、そして力石役を務める伊勢谷友介さんの壮絶な役作りも話題を呼んだ本作だが、こちらも実写版としては2作目にあたる。1作目は、原作漫画の連載開始から3年後の1970年に公開されていた。

 この初代映画版だが、もともと同年に舞台版の『あしたのジョー』が公演されたことを受け、同じキャストがそのまま実写版映画に出演。主人公の丈を俳優の石橋正次さん、そしてライバルである力石役を亀石征一郎さんがそれぞれ演じている。

 映画版では丈とコーチ・丹下段平との出会い、ライバル・力石との激闘、そして力石の死までのストーリーが描かれている。

 漫画版と比べキャラクターのビジュアルはかなり現実的なものに差し替えられているが、一部のシーンをアニメで表現するなど、当時としてはなかなか斬新な表現技法が用いられていた。

 丈の野性味あふれる雰囲気や力石の目力など、原作のキャラクターの持ち味を生かした俳優たちの演技は必見だ。

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