■アイドルから愛される、思いがけない才能があるなど、ありえない展開が面白い

『花嫁衣裳は誰が着る』は、大映ドラマならではのあり得ない展開が満載だ。まず松村さん演じる国民的トップスターの光は、ほかの芸能人などには目もくれず一般人である千代に想いを寄せ続ける。これはアイドル好きなら一度は憧れるようなシチュエーションだが、現実にはあまり見られない展開だろう。

 また、ずっと旅館で働き続けてきた千代が上京し、偶然にもトップデザイナーと出会うのもすごい確率だ。しかも千代にはデザイナーとして類い稀なる才能があり、その才能を見抜いたトップデザイナーが目を見張るといった展開もなかなかありえなくて面白い。

 また、会社のやり方に納得のいかないアイドルの光が、海に向かって石を投げ「ちきしょーっ!!」と叫ぶシーンなどもあり、昭和の時代に多かった激情型ドラマの“あるある”が満載なのだ。

 ちなみにオープニングは「少女にただ1つ許されていたのは、夢を見ることであった……」という来宮良子さんの低く響くナレーションで始まる。この声を聞くと“大映ドラマが始まった!”というワクワク感に没頭できるから不思議だ。

 

 ヒロインが幼いころに親を亡くし、その後、降りかかるいじめや試練に耐え抜き、夢を叶える展開というのは「大映ドラマ」の王道だ。

『花嫁衣裳は誰が着る』は千代を演じる堀さんを襲うあまりの不幸な出来事の数々に胸が痛くなるが、そのぶん、その後巻き起こる絵に描いたようなサクセスストーリーにスカッとできる。本作はDVDも発売されているので、気になる人はぜひチェックしてほしい。

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