■『ルパン三世』記憶をなくした峰不二子

 最後はモンキー・パンチさんの『ルパン三世』から、“魔性の女”キャラの代表格である峰不二子のギャップシーンを紹介したい。

 不二子はルパン一味の紅一点で、誰もが見とれるグラマーな美女だ。自分の欲望に忠実であり、目的のためなら仲間をも躊躇なく裏切るところも彼女の魅力であろう。

 長らく峰不二子の声を担当し、5月20日に亡くなられた増山江威子さんも、かつて特集記事のなかで「男性への甘えは女性なら誰でも出来るが、不二子は甘えながらもルパンにすべてを委ねることはしない女性」と、不二子を甘えの中に冷めた部分がある女性だと評していた。

 そんな不二子だが、彼女の意外すぎるギャップを見ることができる作品がある。それが、1999年『金曜特別ロードショー』で放送された『ルパン三世 愛のダ・カーポ ~FUJIKO’s Unlucky Days~』だ。

 伝説のお宝“コロンブスの卵”を巡ってさまざまなアクションやミステリーが展開される本作だが、最大の特徴は、敵の襲撃を受けた不二子が記憶喪失となってしまうことだろう。

 記憶をなくした不二子は別人のようにひどく怯え、敵にも簡単に捕まってしまうほど弱々しかった。とくに、ルパンのことを「ルパンさん」と呼んでいたのが、本作の不二子を象徴していたように思う。

 そしてクライマックスでは、嵐が吹き荒れるなか、飛行機から吹き飛ばされそうな不二子にルパンが「お前に愛してるって言わせるまで 守ると約束したはずだぜ俺は! 俺の名を呼べ! 不二子」と叫ぶのだ。過去のさまざまな思い出や感情が駆け巡った不二子は、ルパンの腕を掴む。すると同時に記憶が戻ったのだった。

 いつもは互いに騙し合いを繰り広げている二人にとって、意外なシリアス展開であるこのシーン。しかし同時に、互いの信頼関係が垣間見れた名シーンでもあった。

 ちなみにエンディングでは「オレの宝はお前だけさ」と言うルパンに対し、すかさず「そういう冗談は聞き飽きたわよ」と返す不二子。いつもの二人に無事戻っており、ちょっとほっとした気持ちになった。

 

 今回は、漫画・アニメの“魔性の女”キャラが必死な表情を見せた「ギャップ」シーンを紹介してきた。そこには彼女たちのいつになく必死な姿があり、意外な一面を見れたようでドキッとさせられてしまう。

 また、その必死な姿はただの弱さや脆さとしてではなく、人間的な魅力として描かれていたように感じ、ますます彼女たちの虜となってしまった筆者だった。

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