■【番外編】気味悪さの最高傑作!? 日野日出志さんのコミック

 一方、70年代のホラー漫画界において外せない作者といえば、日野日出志さんだろう。

 日野さんの代表作は1971年「ひばり書房」より刊行された『地獄の子守歌』や、1975年の『胎児異変わたしの赤ちゃん』などがある。『週刊少年チャンピオン』での掲載作品はないものの、『秋田書店』からは1986年に『オカルト探偵団 死人形の墓場』や『地獄のペンフレンド』などが刊行されている。

 日野さんの作品は、一度見たら目に焼き付いてしまうような気味の悪い画力が特徴だ。筆者も小学生のころに『怪奇! 毒虫小僧』(ひばり書房)を読んだが、その破壊力のある画風とショッキングな内容がトラウマになってしまった。

 今でこそ過激描写の多いホラー漫画はたくさんあるが、日野さんの作品はその先駆けと言えるだろう。ギョロリとした目のキャラクターを中心に、独特のタッチで表現する描写は日本のホラー漫画ファンだけでなく欧米でも高い人気がある。

 ちなみに、2024年にはフランスの近代美術館であるポンピドゥー・センターにて、日野さんの代表作『恐怖・地獄少女』の原画が展示され話題となっていた。

 

 ホラー漫画は苦手な人がいる一方で、昔から多くのファンもいる。とくに70年代のホラー漫画はその当時の生活の様子もよく分かるうえ、今読み返すと独特のエモさもあって面白い。

 放課後に学生たちがロウソクを持って肝試しをするシーンや、カセットテープに吹き込まれた怪奇の声が登場するなど、その時代の文化が反映されているのにも注目だ。子どものころに読んでトラウマになってしまった作品を、大人になって読み返してみるのもまた一興だろう。

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