歴代『ガンダム』ミハルにマリーダにフレイ…男性パイロットの人生を変えた「女性キャラの死」の画像
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』(KADOKAWA)第15巻・書影より

 1979年からテレビ放送がスタートしたアニメ『機動戦士ガンダム』。主人公アムロ・レイとそのライバルであるシャア・アズナブルの二人に深いトラウマを植え付け、その後の両者の人生に影響を与えたのが、フラナガン機関によりニュータイプ能力が備わるよう育てられた少女ララァ・スンの死だ。彼女の最期は、二人の運命だけでなく、「宇宙世紀」最大のターニングポイントと言っても過言ではない。

 同シリーズでは衝撃的な死を迎えるキャラクターが数多いが、ララァのように、女性キャラクターの死は男性パイロットに大きな影響を与えてきた。そういった物語は、宇宙世紀にとどまらず、様々な『ガンダム』シリーズに見られる。

■カイを軟弱者から脱却させたミハル

 第1作『機動戦士ガンダム』において、ララァの死は衝撃的だが、それに劣らず、ミハル・ラトキエの死も衝撃的なものだった。戦時下の物語を描く同シリーズにおいて、主人公パイロットだけでなく、サブキャラである男性たちにも大きな影響を与えた。

 そのシーンが描かれる第28話「大西洋、血に染めて」は、『機動戦士ガンダム』の中でも屈指の名エピソードである。ミハルは、地球連邦軍のベルファスト補給基地の郊外に住む民間人。まだ幼い弟と妹を養うためにジオン公国軍のスパイとして活動していた少女で、たまたま、連邦軍のカイ・シデンと知り合ったことで、ホワイトベースに乗り込むことに成功する。

 二人が、互いに異性として意識するようになりつつ物語は進んでいくが、その矢先、ジオンと戦うことを決意したミハルがカイとともに輸送機に乗り込み出撃。そしてはるか上空で不慣れな操作によって彼女は爆風に巻き込まれ、そのまま事故死してしまうのだ。

 もともと民間人であったカイは、軍人として戦うことに嫌気がさしていたが、その後はミハルのような犠牲者が出ないようにと、自らの意志でジオン公国軍と戦うことを決意。作中で明言はされていないものの、その後の展開でカイの成長するスピードが速くなったと見るファンは少なくない。

『ガンダム』以降の作品で、カイは軍を抜けてジャーナリストとなっているが、ミハルのような犠牲者を出さないためには、そのままモビルスーツパイロットを続けるよりも向いている職業であるかもしれない。ジャーナリストという職業を選択したこともミハルの影響と考えると、胸を打たれる思いである。

■死後の思念で二人の運命を変えたマリーダ

『機動戦士ガンダムUC』では、マリーダ・クルスの死の影響が大きかった。

 マリーダは「袖付き」ことネオ・ジオン残党軍に所属する軍人で、ミネバ・ラオ・ザビ殿下の護衛を任務とするガランシェール隊所属の強化人間だ。ニュータイプ専用MSクシャトリヤの専属パイロットとして、主人公バナージ・リンクスの前に立ちはだかるが、後に和解。短い期間ではあるが、日常をともに過ごすこともあったシリーズ屈指の人気キャラクターだ。

 そんなマリーダは、最終決戦時に死んでしまう。バナージは、直接の原因となった地球連邦軍パイロットであるリディ・マーセナスに怒り、彼に本気の殺意を向ける。だがマリーダの死後の思念が、バナージをなだめて抑える。

 彼女の死が、バナージの成長のきっかけの一つになったことは想像に難くない。しかし、さらに影響があったのは、リディのほうだろう。自らの手でマリーダを殺めてしまったリディは、そのことにより正気を取り戻し、バナージへの対抗意識を乗り越えて、バナージとともに戦うこととなったのである。

 残念ながら戦争を生き抜くことは叶わなかったが、彼女の人生が他の人物に多くの影響を与えたのだ。

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