■おなじみの悪役・比留間喜兵衛が登場!

 比留間喜兵衛というキャラクターも、2023年版アニメの見どころのひとつとして挙げられるだろう。比留間兄弟は『るろうに剣心』に登場する名キャラクターとして、原作ファンにはおなじみの存在だ。原作では第1話で登場し、剣心が「人斬り抜刀斎」であることを薫に明かすきっかけにもなっている。ずる賢い兄・喜兵衛と巨漢の弟・伍兵衛の2人であり、特に兄の喜兵衛は神谷道場の乗っ取りを狙う男として重要な役割を果たした。

 しかし、ストーリー的にもなかなか重要なキャラであるにもかかわらず、兄・喜兵衛は旧アニメには登場していない。旧アニメはオリジナル展開が多く、第1話でも伍兵衛が比留間兄弟の2人の役割を一手に担っていたからだ。しかし、新アニメではついに比留間兄弟のそろい踏みが描かれ、原作ファンとしては嬉しいサプライズとなった。というのも、喜兵衛はかなりクセが強いキャラで、筆者としては実際に動く姿を心待ちにしていたからである。

 旧アニメではカットされてしまった喜兵衛だが、新アニメでは原作通りに序盤では多くの登場シーンが描かれていた。極悪な性格で最後には惨めな敗走をするのがお決まりのパターンで、第1話で剣心に追い詰められて失禁するシーンは喜兵衛のキャラクター性をよく表している。新アニメではそのシーンもしっかり映像化されており、喜兵衛の小物っぷりがこれでもかと伝わってきた。

■「雷十太編」がパワーアップして映像化!

「雷十太編」は、旧アニメでは「原作通り描かれなかったエピソード」として有名だ。原作では、明神弥彦のライバル・塚山由太郎が登場し弥彦の精神的な成長が描かれる、筆者にとってもお気に入りのエピソードである。しかし、旧アニメではオリジナル色が強く、敵キャラの石動雷十太(いするぎ・らいじゅうた)がまったくの別人になっているという声もある。

 原作では、雷十太は古流剣術を基に興した流派「真古流」の金銭的支援を目的に、チンピラを雇って塚山親子を襲わせた。要は自作自演の救出劇なのだが、由太郎と彼の父を助けたことで信頼を得た雷十太は、竹刀で戦う剣術ではなく「殺人剣」を再興させることを目的に道場破りを行っていた。

 その後、戦いのなかで剣心に「殺人剣を自慢しているが、実際に自分の手で人を殺したことがない」ことを見抜かれ、剣客としてのプライドを打ち砕かれる。旧アニメでは、雷十太は平気で人殺しを行い、伊豆に武士の国を築くことが目的の悪役として登場し、原作とは異なるストーリーが描かれた。

 それが新アニメでは原作に準拠した形で登場し、ついに待望の完全アニメ化に成功しているのだ。そこにくわえ、ただ単に「忠実に映像化しただけではない」こともテンションが上がるポイントになっている。

 新アニメでは本エピソードの敵キャラクターである雷十太のキャラクター性が深く掘り下げられていて、原作よりも彼に焦点を当てたエンディングになっている。原作者が監修していることで、原作以上にキャラやストーリーが深堀りされているのも新アニメの特徴のひとつだろう。

 

『るろうに剣心』の新作アニメは原作の「京都編」にあたる「京都動乱」が10月3日から放送予定だ。原作者完全監修ということもあり、旧アニメでは描かれなかった原作のキャラやストーリーも深掘りされ、往年のファンを喜ばせている本作。新旧アニメの比較も楽しいポイントなので、ぜひそこにも注目しつつ楽しんでほしい。

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