■アントニオ猪木視点から見たジャイアント馬場『プロレススーパースター列伝』
スターレスラーを題材にしたドキュメンタリー風フィクション『プロレススーパースター列伝』(原作:梶原一騎さん、作画:原田久仁信さん)7、8巻では、「なつかしのB・I砲! G馬場とA猪木」と称して、馬場さんと猪木さん2人のヒーローのプロレス人生が描かれている。
事実をもとに本人の半生を描くスタイルは『ジャイアント台風』と同じだが、本作では制作協力の猪木さん視点がメインとなっている。つまり「あのアントニオ猪木から見たジャイアント馬場は何者だったか」が楽しめるのがポイントだ。
出世のスピードでは、馬場さんに一歩譲った猪木さん。師匠の力道山さんに気に入られ猛スピードで成り上がっていくライバルに、猪木さんは「今に差をちぢめてやるぞ!!」と対抗心を燃やしまくる。かと思えば、その才能を前に「これほどの男と競争しようなんて、たしかに十年はやいのかッ!?」と焦ったりと、さまざまな感情を向ける。
猪木さんにとって、馬場さんがいかに大きな存在だったか読み取れるのが面白い。
迫力あるプロレス漫画としてだけでなく、同じ時代を生きた2人の“プロレススーパースター”のドラマとしても完成度の高い漫画だ。
ジャイアント馬場さんをキャラクターに昇華した漫画を紹介してきた。当時の熱狂を肌で感じることはもうできないが、当時の漫画にはあの頃のぬくもりが残っている。逝去から25年の節目を迎えた今年こそ読んでみてもいいかもしれない。
これは余談だが『浦安鉄筋家族』(浜岡賢次さん)には“大巨人”と呼ばれる主人公・小鉄の忠実な子分が登場する。長身で、とても強いプロレスラーで、口癖が「ババー」なのだが……あえて言うまい。