■「俺が来るまで よく堪えた 後は任せろ」

 次に炭治郎が義勇と出会ったのは那田蜘蛛山。下弦の伍・累を前に絶体絶命のピンチにおちいった炭治郎を救ったのが義勇で、そこでかけた言葉が「俺が来るまで よく堪えた 後は任せろ」だった。

 このセリフを言った時は、無表情ながら初めて炭治郎を言葉で労ってくれたように思う。この時見せた「全集中・水の呼吸 拾壱ノ型 凪」は義勇オリジナルの技。この技は義勇の間合いに入った術は全て凪ぐ・無になるというもので、累の最硬度の糸をたやすく斬った。静かだが心の内に情熱を秘める彼らしい技だった。

■「あれは確か二年前…」

 次は名言ではなく、むしろ“迷言”かもしれない。那田蜘蛛山で禰豆子を殺そうとする蟲柱・胡蝶しのぶと炭治郎を引き離そうと、彼女をがんじがらめにしながら言った「あれは確か二年前…」というセリフだ。しのぶに「どういうつもりなんですか?」と問われたあとのセリフだが、急に話が飛んでいる。もちろん彼に悪気はないのだが、しのぶは「そんな所から長々と話されても困りますよ 嫌がらせでしょうか」とガチギレだ。

 見た目はクールなイケメンなのに言葉が足りず、意思疎通を図る気がないとも見えるほどコミュニケーション能力に乏しい義勇は、たびたび人をイラつかせてしまう。

 漫画やアニメの世界だから「作中屈指のイケメンで実力もある」という点で上位の人気を誇っているのかもしれないが、実際に義勇が友達や職場の人だったら……。確かに他の柱と同じような態度をとってしまうかもしれない。彼の今後がつい心配になってしまう。

 裏を返せば、これまで人とコミュニケーションを育めるような環境にいなかった、そのための時間も全て鍛錬に費やしたということなのかもしれない。もしくは、最終選別での錆兎との別れをきっかけに、人間に対して心を閉ざし、わざわざ仲良くなるつもりなどなかったのだろう。

 実際に「柱稽古編」のアニメで見せた錆兎との過去回想では、義勇は大笑いしながら純粋な笑顔を見せていた。そう考えると、彼をこんな性格にしてしまったのも、広い意味では鬼の仕業で、彼もまた鬼の犠牲者だと言えるのかもしれない。

 まだまだ詳しい心情が知りたくなる水柱・冨岡義勇。無限列車編、遊郭編、刀鍛冶の里編としばらく出番がなかった彼だからこそ、彼の熱い一面が見られるセリフは、柱稽古編以降の展開を楽しみに待つほかないようだ。

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