■「白い稲妻」が宿命のライバルとしのぎを削る!競馬ドラマに涙してしまう『風のシルフィード』
1989年から1993年まで『週刊少年マガジン』(講談社)で連載されたのが、『風のシルフィード』(原作:本島幸久さん)だ。「白い稲妻」と称されるシルフィードが主人公で若手ジョッキーの森川駿とともに、数多のライバルたちとしのぎを削りながら栄光を手にしていく感動作である。
本作はちょうどオグリキャップが現役の頃にスタートした作品で、第二次競馬ブームの真っ只中にあった。「白い稲妻」というニックネームは、オグリの先輩でライバルだったタマモクロスの異名でもあり、漫画同様に後方一気の末脚が魅力的だった。
シルフィードは生まれて間もなく母馬が死亡し、駿も母親を亡くしている。駿はデビュー前からシルフィードを世話しており、両者は固い絆で結ばれていた。
そんなシルフィードのライバルといえば、マキシマムだ。ダービーでも惜敗してしまい、当初、世代の頂点にはマキシマムが立っていた。
しかしその後シルフィードは菊花賞でマキシマムを倒し、翌年には凱旋門賞へ挑戦、見事勝利を飾って世界の頂点に立つこととなる。
この当時、日本調教馬が海外GIに勝利するなんて夢の世界であり、ましてや世界最高峰の凱旋門賞へ挑戦するのも大変なことであった。2023年までに数多くの日本馬が海外GIを勝利しているが、いまだに凱旋門賞は勝利したことがない。漫画とはいえ、シルフィードの功績は素晴らしいものといえるだろう。
そして、本作も悲しいドラマが多かった。その最たるはやはり、引退後のシルフィードが事故で死亡するシーンだろうか。あれはやるせなかった。種牡馬として残った産駒はわずか2頭となってしまうが、続編の『蒼き神話マルス』に登場する“白の一族”として、その血統がライバルとして登場するのは胸熱の展開だったものだ。
さて、競馬漫画には人馬一体となって感動するシーンが多い。まだまだ盛り上がりを見せる春のGIだが、ダービー前にもう一度感動する競馬漫画をおさらいしておきたいものだ。