誰もが一度は読んだりアニメ版を観たりしたことがある人気漫画には、意外な設定が存在する場合もある。その中には作者が意図的に作ったものもあれば、編集者の意向が反映されているものもあるのだろう。
そうした設定は作中でこっそり描かれていることもあれば、ストーリー上では特に明かされずに終わったものもある。そんな裏設定を知ったうえで作品を見直すと、新たな面白さにつながるのだ。
そこで今回は、人気漫画作品にまつわる「そうなの?」と思える設定をいくつか紹介していこう。
■『北斗の拳』ケンシロウの七つの傷に意味はなかった
まず原作:武論尊さん、作画:原哲夫さんによる『北斗の拳』について紹介したい。主人公のケンシロウにはトレードマークとなる七つの傷がある。これは恋敵であるシンに付けられたものだ。
シンはケンシロウの恋人であるユリアが好きで、ずっと忘れられずにいた。そんな中、核兵器によって世界が大混乱に陥り“力こそ正義”の世界になってしまうと、シンはジャギにそそのかされて力技でケンシロウからユリアを奪おうと決意。ケンシロウを南斗聖拳で倒し、その胸に七つの傷を付けたのだ。
実はこのときシンがケンシロウに七つの傷を付けたのには特に意味はない。原作者自身もこの傷については、“最初は完全なファッションだった”と語っている。ケンシロウは北斗神拳の伝承者だからその証として、七つの傷が付いているのでは?と勘違いしている人も多いはずだ……。
とはいえ、作中でもケンシロウは「七つの傷を持つ男」として恐れられており、たとえ最初は理由がなかったとしても、彼の傷は結果として重要な意味を持たせられている。
■『ドラえもん』ジャイ子には本名がない!?
続いては藤子・F・不二雄さんによる『ドラえもん』に登場するジャイ子の本名についてだ。ジャイ子といえばジャイアンの妹で、漫画を描くのが好きな女の子である。兄が「剛田武」であることからも、彼女が「剛田◯◯」という名前なのは明らかだ。
しかしジャイ子にかんする本名は一切公開されていない。その理由については、2006年にテレビ放送された「ドラえもん誕生物語~藤子・F・不二雄からの手紙〜」で関係者が語っている。
どうやら、「もし幼稚園や小学校に通っている女の子で同じ名前の子がいたら、“ジャイ子”と言っていじめられてしまうのでは?」という配慮から彼女の本名を設定しなかったようだ。確かに、ジャイ子というキャラのインパクトは大きい。同じ名前の子が、ジャイ子というあだ名を付けられてしまう可能性もなくはないだろう。
ちなみに兄のジャイアンも当初は同じ理由で本名が設定されていなかったが、ファンの投書をきっかけに、当時アシスタントを務めていたえびはら武司さんから名前がとられたという。
そこからも制作側の細かい配慮がうかがえるが、実は作者が本名を考えていたという説もある。ただしご本人が亡くなってしまった今となっては真実はわからない……。個人的にはジャイ子として定着してしまったので、「ジャイ子のままでいいのでは?」というのが素直な気持ちだ。