■遊んでくれてありがとう「幽霊駅13号」
鉄郎は大人だけではなく、子どものキャラクターからも愛され守られている。そんなエピソードが登場するのが「幽霊駅13号」だ。
ある日車内を無重力状態にして、空中遊泳を楽しんでいた鉄郎たち。しかし突如重力装置が作動し、999号は予定にはないステーションNo.13に到着。ここで乗り込んできたのは、黒いシルエットの少女・クロサリスだった。
彼女は鉄郎の顔を見て笑い、もっと面白い顔をしてとねだる。鉄郎は要望通り面白い顔や芸を繰り出し、笑い転げるクロサリス。
実はこの駅、クロサリスの兄が憧れの銀河鉄道が一度でいいから近くはとまってくれないかと星の駅となった姿である。しかし異常事態に気づいた銀河鉄道中央管理局はステーションNo.13を破壊しようとする。その危険を知った駅の兄とクロサリスは、遊んでくれた鉄郎や話を聞いてくれたメーテルに感謝し、巻き込まれそうになっていた999号をかばって星もろとも破壊されてしまうのであった。
星の少ない環境で生まれ育ち、友達も話し相手もいなかった兄妹。そこに999号がやってきて、生まれて初めて鉄郎に遊んでもらったクロサリス。子どもにとって友達は、やはり生きる上では欠かせないのかもしれないと痛感してしまうエピソードだ。
何度も“ありがとう”と言いながら、999号をかばって爆破されてしまう星の姿は何とも切ない。
このように鉄郎は実に多くの人に命を救われており、しかも救ってくれた人物はみな、鉄郎とは初対面の人物である。初対面の鉄郎になぜここまで優しくなれるのか、それは鉄郎がほかならぬ“人間”であり、機械人間とは違った温かい心を持っているからではないだろうか。
今後地球でもAI化が進み、機械人間に近いようなロボットが次々と登場していくだろう。そのような未来が訪れるなか、鉄郎のような「人間らしい」存在はますます貴重となっていくのかもしれない。