■子どもを育てるため飴を買いにきた幽霊『子育て幽霊』
最後に紹介するのは『子育て幽霊』だ。長崎に伝わる民話「産女の幽霊」をモチーフにしたこのエピソードは、夜更けに見知らぬ女性が飴を買いにくるというもの。
毎晩毎晩やってくる女性に飴を売る主人だが、ある日その女性がすでに亡くなっている女性に似ていると知る。
不思議に思った主人は、飴を買って帰路につく女性のあとをつけていくことに。すると、彼女は墓場の前でスーッと姿を消してしまう。あまりの出来事に驚いた主人が寺の住職とともに墓場に行ってみると、かすかに赤ん坊の泣き声が聞こえ、そこで捨てられていた赤ん坊を見つけるのだった。
女性が幽霊として現れ、飴を買いにきたことで命が助かった赤ん坊。墓場に捨てられて誰にも見つけてもらえなかった赤ん坊を不憫に思い、幽霊となってあらわれた女性のことを思うと、母性を感じざるをえない。
民話の「産女の幽霊」では、墓場を掘り起こすと亡くなった女性が生まれて間もない赤ん坊を抱いており、赤ん坊は無事に実の父親に引き取られたと伝わっている。『まんが日本昔ばなし』とは少し展開が違うようだが、実の子どもでも捨てられた子どもでも放っておくことができなかった女性の思いは同じだろう。
死してなお、幼い子どもを生かすため飴を買いにきていた女性。その姿から母親の偉大さがよくわかるエピソードだろう。
さまざまな方法で子どもを守ろうとする母親の姿が描かれたエピソードたち。石になったり幽霊になったりと現実ではありえないような話ばかりだが、子どもを思う気持ちの深さに共感する人も多いのではないだろうか。
ぜひ「母の日」の今日、母親の偉大さを感じるこれらのエピソードを見返し、自身の母親に感謝の気持ちを伝えたいと思った筆者だった。