■どんな非難も実力で黙らせる!『ああ播磨灘』播磨灘

 90年代の『モーニング』(講談社)を盛り上げた痛快相撲漫画『ああ播磨灘』(さだやす圭氏)の主人公「播磨灘」こと播磨灘勲は、伝統にそぐわない横綱の典型といえる。

 第1話で横綱昇進を果たした播磨灘は、不気味な兜を着けて入場する奇抜なパフォーマンスをおこない「万が一 わしが負けたなら わしゃその日 限りで引退する!」と高らかに宣言する。

 その後の取組では負かした相手の頭をまたぐ、砂をかける、暴言を投げかけるとやりたい放題。瞬く間に日本中の注目と非難の的となった播磨灘は、彼を狙う力士との死闘に挑んでいく。

 ここまで書くと悪役が大暴れしているだけに見えるが、実際に本作を読んでみると、むしろ播磨灘を応援したくなるから不思議だ。

 播磨灘は「強いからこそ横綱」という信念を持っており、それにふさわしい取組であらゆる批判をねじ伏せる。さらに、死力を尽くした力士を認める意外な一面もある。

 伝統や思いこみを徹底的に破壊し、自分だけの横綱道を突き進む播磨灘の姿は、まさに“痛快”のひと言に尽きるだろう。

 

 今回紹介したキャラクターの共通点は、相撲への気持ちに嘘はないところだ。

 誰よりも相撲に真摯だからこそ、どんなに行動がぶっとんでいても力士としてブレたりしない。その一本筋が通った生き様は、横綱にふさわしいといえるかもしれない。

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