■一国の王が拳から放つ攻城砲! 『ONE PIECE』の「キング・パンチ」
最後は『ONE PIECE』(尾田栄一郎さん)より、“戦う王”の異名を持つエリザベローII世の「キング・パンチ」を紹介しよう。
プロデンス王国国王であるエリザベローは、ドレスローザのコロシアムBブロックにて初登場する。ともに出場した軍師・ダガマ曰く、エリザベローは一撃で要塞に風穴を開ける威力を持つ「キング・パンチ」を持っており、命中さえすれば“四皇”にも致命傷を与えることが可能だと言われていた。
そんな強力な「キング・パンチ」も発動には条件があった。一発ごとに、一時間の集中とウォーミングアップを必要とするのだ。そのため、エリザベローは試合開始時点ですでに汗をかくほどのシャドーボクシングをしており、ダガマ率いる共闘者たちが出場者の頭数を減らすまでその体を温め続けていた。
波乱とともにエリザベローを守る陣形が崩れていくと「むき出しの刃程危険なものはない……!!」と、不敵な笑みを浮かべる。不穏な空気を察した観客たちがパンチの射線上から逃げ出すと、猛烈な爆風とともに周囲の出場者が吹き飛んでゆくのである。
Bブロックはエリザベローの勝利と思われた矢先、同ブロックに出場していたバルトロメオの“バリバリの実”の能力が真価を発揮したことで、結果としては敗北してしまった。
悪魔の実に頼ることなく、己の拳一つが“四皇”の脅威となりうるエリザベローの「キング・パンチ」には、いわゆるロマン砲としての魅力がある。
作中ではその後、ゾロとピーカの戦いにて発生した国を覆うほどの瓦礫を一撃でお掃除する際に役立った。しかし、「キング・パンチ」のロマンが忘れられない筆者としては、ますますの盛り上がりを見せる今後の物語で再び敵に対して放たれる、劇的な「キング・パンチ」を期待したいところである。
読者のハードルが上がっていながらも毎回得られるその爽快感は、仲間の犠牲という、ある種の悔しさの果てに描かれているからこそ得られるものではないだろうか。
仲間が時間を稼ぎはじめた時点で先の展開はある程度予想できるのに、なぜかいつも胸が高鳴ってしまう「一撃必殺技」の演出には今後も注目していきたい。