ジャンプ漫画において、主人公の“覚醒”は欠かせない。たとえば、『ドラゴンボール』(鳥山明さん)の孫悟空はクリリンの死をきっかけに“超サイヤ人”へと覚醒、フリーザを圧倒してみせた。また、『ONE PIECE』(尾田栄一郎さん)のルフィは“ギア2”で圧倒的なスピードを手に入れ、CP9を凌駕。“ギア”はその後も進化し続け、そのたびに物語の展開にも大きく影響している。
このように主人公の「覚醒シーン」は、ストーリー上もっとも盛り上がる瞬間であり、ジャンプ漫画の醍醐味と言っても過言ではないだろう。そこで今回は“超サイヤ人”や“ギア”に匹敵する、ジャンプ漫画の主人公たちを紹介する。
■無惨の細胞が恐怖した「痣者」竈門炭治郎
2016年から連載された、吾峠呼世晴さんの『鬼滅の刃』「遊郭編」では、主人公・竈門炭治郎に衝撃的な覚醒シーンがあった。
十二鬼月・堕姫は自身の“帯”を使い、思うがままに遊郭の町を破壊し尽くす。多くの人が犠牲となり、それまで煌びやかだった遊郭の町は一瞬にして阿鼻叫喚の地獄と化した。そんな光景を目の当たりにした炭治郎は、怒りのあまり血の涙を流し「痣者(あざもの)」へと覚醒するのである。
「痣者」に覚醒した炭治郎は“ヒノカミ神楽”を連発し、常人ならざる力を発揮した。それまで傍若無人だった堕姫が、体内にある鬼舞辻無惨の細胞ごと震え圧倒される戦闘は痛快だ。
しかし、このとき炭治郎は呼吸をすることすら忘れており、すぐに限界を迎えてしまう。あと一振りで堕姫の首を落とせるところまで追い詰めていただけに、非常に惜しい覚醒シーンとなった。
さらに「遊郭編」のクライマックスにて。炭治郎は堕姫の兄で”真の上弦の陸”である妓夫太郎との戦闘の際、最後の力を振り絞って再び「痣者」へ覚醒する。
このときの覚醒では額のアザは炎のように変化し、目元まで広がっていた。炭治郎が雄叫びを上げながら見事妓夫太郎の首を切り落とす瞬間は作中屈指の名シーンであり、思わず力が入ったという視聴者も多いのではないだろうか。
■自我なき力でウルキオラを圧倒…「完全虚化」黒崎一護
“覚醒”といえば、やはり『BLEACH』(久保帯人さん)の黒崎一護は外せない。2001年から連載された本作において一護の覚醒バージョンはたくさんあるが、ウルキオラ戦で見せた「完全虚化」はまさに衝撃的だった。
織姫を救い出すため虚夜宮に乗り込んだ一護だったが、刀剣解放第二階層(レスレクシオン・セグンダ・エターパ)を発動したウルキオラにまったく歯が立たず、駆けつけた織姫の前で胸に巨大な穴を開けられてしまう。
絶望的な一護の姿を見て、織姫は「たすけて 黒崎君!!!!」と泣き叫ぶ。するとその叫びに呼応するかのように、一護は「完全虚化」状態で覚醒するのだ。全身が白く、髪は伸び、大きく鋭く伸びた二本角の仮面の姿となった一護。その後の展開でわかるが、虚に極めて近いその姿は藍染惣右介が作りだした“ホワイト”そのものだった。
一護はそれまで手も足も出なかったウルキオラを逆に圧倒し、あっという間に決着をつける。しかし、「完全虚化」により自我を失っていた一護は、内臓が傷つき戦う意思を示さないウルキオラに対しても構わず斬りつけようとし、さらに制止に入った石田雨竜にまで刃を向ける。
その直後、ウルキオラにスキをつかれ、角が折られたことで「完全虚化」はようやく解かれた。自我を取り戻した一護の前には、自分の攻撃で傷ついた石田と、灰のように消えゆくウルキオラの姿が……。
一護の「完全虚化」は強敵・ウルキオラを圧倒してみせたが、同時に自我を失ってしまうという大きな代償があった。一歩間違えれば仲間の石田を殺し、さらには織姫まで手にかけていたかもしれない。一護の覚醒はそれほど危険で圧倒的なものだった。