■何とかして動物の命を救いたい…奮闘したハムテル&祖母
第32話には、ハムテルとその祖母の活躍が描かれるエピソードがある。
獣医学部の学生であるハムテルだが、祖母が“孫は獣医学部だからネコでも鳥でも気軽に相談して”と近所に触れ回ってしまい、近所の人は次々にハムテルの家にペットを連れて相談に来るようになった。
そんな状況が嫌でハムテルは遅くまで大学に残っていたが、ある日、学生が“自転車で子犬を轢いてしまった”とやって来る。教授はおらず、頼りの先輩も逃げてしまい、残ったのはハムテルと二階堂だけ……。しかも子犬は白目を向いており、自分らで太刀打ちできる状態ではない。
一方そのころハムテルの家にはぐったりと翼を広げた文鳥が運ばれて来ており、祖母1人で対応しなくてはならない事態となっていた。
“早く何とかしてくれ”という依頼者の目に迫られ、窮地に陥る両者。しかし白目の子犬はチョビが舐めたことで意識を取り戻し、応急処置で折れた足に割り箸を固定させ事なきを得る。一方、祖母が対応した文鳥もサラダ油で肛門をマッサージしたことで卵詰まりが治った。祖母は「ああ、お医者さんってすばらしい」と安心し、その後、ハムテルにもっと勉強するようはっぱをかけるのであった。
交通事故や出産トラブルは、人間だけでなく多くの動物でも起こるものだろう。そんな状況をとっさの判断で対応する獣医師は本当に大変だ。まだ獣医師ではないハムテルやその祖母が、何とかして動物の命を救った心温まるエピソードである。
『動物のお医者さん』には涙してしまうほどの感動エピソードは少ないが、とにかく佐々木氏の描く緻密な動物描写が素晴らしい。とくにチョビが赤ちゃんの頃のエピソードは物凄く可愛く、読むだけで涙が出るくらいキュンとしてしまう。
ぜひ「ペットの日」に合わせ、多くの胸キュン動物が出てくる『動物のお医者さん』を読んでみてはいかがだろうか。