■思想がラスボスそのもの…『DEATH NOTE』夜神月
名前を書かれた人間が死ぬ“デスノート”をめぐる、原作:大場つぐみ氏、作画:小畑健氏によるサスペンス漫画『DEATH NOTE』(集英社)の主人公・夜神月もまた、主人公でありながらラスボスポジションに収まったキャラだ。
“デスノート”の力で犯罪者のいない新世界の神になろうと決意した月。正義のために悪人を裁く「キラ」となり、警察や探偵たちと激しい頭脳戦をくり広げていく。第1部では世界一の探偵・Lと一進一退の攻防を繰り広げ、互角のライバルと競い合う主人公らしい活躍を見せた。
続く第2部でも月はLの意思を継ぐニアやメロたちと緊迫感ある駆け引きをするも、最後はすべての悪行を暴かれてしまい、死神リュークの手で“デスノート”に名前を書かれて命を落とす。それまで彼が無数の命を奪ってきた方法で死ぬとは、なんとも皮肉な話だ。
もともと月は正統派主人公とはいえない思想を持っており、目的のために他人を積極的に殺そうとする考え方はむしろ悪役のそれだ。『DEATH NOTE』の物語はそんな月が死ぬことで幕を閉じる……。こういった要素をふまえると、月こそが本作のラスボスとも考えられるだろう。
正義が悪を倒す王道の主人公もいいが、今回見てきたように主人公がラスボスのような活躍をする展開も魅力的だ。「本当にこの主人公を応援していいのか?」という不安がスパイスとなり、ページをめくる手を止めさせない。そんな「ラスボス系主人公」の面白さは、数ある名作が証明している。
もし、あなたが連載中の漫画を楽しんでいるのなら「この主人公はラスボス化するだろうか?」と思いながら読んでみるのもまた面白いかもしれない。