■親を亡くした子どもたちと孤島で暮らす元軍人「ククルス・ドアン」
最後は、武骨で寡黙な元軍人「ククルス・ドアン」を紹介する。
ククルス・ドアンは『機動戦士ガンダム』第15話「ククルス・ドアンの島」、そして2022年のリメイク作品『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』に登場する愛すべき敵役だ。両作品の基本設定は同じだが違いも多いので、今回はリメイク版をベースに紹介していきたい。
ドアンは、ジオンの精鋭部隊であるサザンクロス隊の元隊長だ。明確な理由は語られていないが、彼自身の戦闘により民間人が犠牲になり、そのことが一因となってジオン軍を脱走したと言われている。
脱走後は無人島・通称“ククルス・ドアンの島”に、戦争孤児20人とともに自給自足の生活を送り、島に訪れる者がいれば脱走時に使ったザクIIに乗り、ことごとく退けていた。
ジオン軍にいたときは、シャアと並ぶほど名の知れた凄腕のエースパイロットだったドアン。作中ではアムロのガンダムを再起不能に追い込み、さらには島に攻めてきたサザンクロス隊2名も返り討ちにするほど、卓越したMS操縦技術を見せている。
また、彼が乗っていた少し面長でアンバランスな見た目のザクIIも印象的だった。この見た目から通称“ドアンザク”と言われており、リメイク作品でもこのデザインは引き継がれている。孤島で物資が不足するなか、倒したモビルスーツの部品を再利用しているという設定が追加され、そのアンバランスな見た目も歴戦を感じさせるいい味となっていた。
ラストで、アムロはドアンに対して「あなたの体に染み付いている戦争の匂いが、戦いを引き寄せるんじゃないでしょうか?」と言い、その根源であるザクを海中に投棄する。そのアムロの行為に感謝するドアン。島のその後は分からないが、戦いから離れ子どもたちと一緒に穏やかな生活を送っていてほしいものだ。
今回は、愛さずにはいられない『ガンダム』シリーズのクセの強い敵役たちを紹介してきた。紹介したキャラは、本編以外にもスピンオフ作品である漫画、小説、ゲームにも登場し、ククルス・ドアンに至っては40年以上の時を経て、彼の登場回である話数がそのままリメイクの劇場作品にまでなっていた。
出番こそ少ない人物もいるが、いずれのキャラもとても印象的で、これからも人々に愛され続ける敵役たちだと言えるだろう。