『月刊アフタヌーン』(講談社)で連載中の漫画『スキップとローファー』のコミックス最新刊10巻が3月22日に発売された。この巻のあとがきで、作者の高松美咲さんが、作品のモデルにもなっているという石川県珠洲市の能登半島地震の被害状況を綴った。
『スキップとローファー』は、田舎出身の主人公・岩倉美津未が東京の高偏差値高校へ進学したことを機に上京する物語。美津未が入学式の日にある同級生と出会ったことで、彼女の学校生活が少しずつ動き出していくという青春作品だ。
同作は「マンガ大賞2020」で3位を受賞し、2023年5月には第47回「講談社漫画賞」総合部門を受賞。2023年4月からはTOKYO MX系にてアニメ放送もされ、丁寧に描かれるストーリーと心情描写で話題となった。
作者の高松さんは富山県出身だが、美津未の出身地である「石川県のはしっこ」の場所のモデルとなったのが、母方の実家がある石川県珠洲市だという(作中では鈴市凧島町という架空の町として描かれている)。
主人公の故郷ということで作中でもこの「鈴市凧島町」はたびたび登場し、アニメ以降の物語では美津未の友人たちが町を訪れる場面もあり、のどかな風景として印象的な描かれ方をしている。
高松さんはコミックス10巻の巻末で、その珠洲市が2024年1月1日に起こった能登半島地震で震度6強を観測し、家屋のほとんどが倒壊したことに言及。美津未の実家として描かれた家が全壊、自身の祖父母が地震の犠牲となったことを綴った。
また、該当地域の被害状況は報道の印象よりもさらにひどいという悲痛な心境を伝え、最後は漫画にかける今後の強い思いと「この巻は、大好きな祖父母に捧げさせてください」という言葉で締めくくった。
このあとがきは、コミックス発売日と同日の3月22日に作者のXでも公開され、読者からは「ちょうど主人公が実家に遊びに帰った9巻を読み終えた頃だったので、このあとがきを拝読させて頂き、涙がでてきました」「あの時見た美津未ちゃんの家も、凧島の町ももうないのかと思うと途方もない悲しみに襲われ涙が止まりません」「主人公の故郷をごく自然に大切に、とてもあたたかく描かれていたからこそ、とてもつらいです」「被災地の皆様が落ち着かれた頃に一度観光で訪れてみようかと思います」と大きな反響を集めている。
なお、コミックス10巻は通常版のほかに、5月31日までの期間限定で「能登半島地震応援版」も発売されている。こちらは薄緑色の表紙が特徴で、石川県珠洲市の風景イラストや描き下ろしを含む4枚のポストカードが封入。アフタヌーン編集部は能登半島地震を受けて1000万円を寄付することを発表しているが、コミックスの収益がその額を超えた場合、その分の収益金も後日寄付に充てられるという。