2024年でプレ45周年! 昭和に一大ブームを巻き起こした名作『おはよう!スパンク』を振り返るの画像
なかよしコミックス『おはよう!スパンク』なかよし60周年記念版第1巻(講談社)

 みなさんは、昭和に人気を博した漫画『おはよう!スパンク』(原作:雪室俊一さん、作画:たかなししずえさん)をご存じだろうか? 1978年から1982年まで『なかよし』(講談社)にて掲載され、1981年から翌年にかけてはテレビアニメでも放送された。

 本作は当時、少女漫画のなかでもこれまでにない作品として話題となり、犬のキャラクターであるスパンクのグッズは飛ぶように売れ、一大ブームを巻き起こした。今回はそんな『おはよう!スパンク』の魅力を振り返ってみたい。

■講談社漫画賞少女部門受賞した実力作! アニメ化でさらに人気に

 少女漫画雑誌『なかよし』で人気連載されていた『おはよう!スパンク』。数々のグッズにもなった可愛らしいキャラクターであるスパンクのイメージが強い本作だが、81年度の第5回講談社漫画賞少女部門を受賞するなど、ストーリーの内容も深くて面白い。

 漫画における本作のストーリーはこうだ。主人公の女子中学生・森村愛子は、ある日愛犬・パピーと海岸沿いを散歩していたところ、池上玲という青年が運転する車に轢かれてしまい、パピーは死んでしまう。

 悲しむ愛子の前にユニークなルックスをした人間の言葉が分かる「スパンク」という犬が現れる。愛子はやがてスパンクと仲良くなり、玲への感情も恨みから恋愛へと発展していく……というストーリーだ。

 漫画における『おはよう!スパンク』は、どちらかといえば愛子の恋愛や、海で行方不明になった愛子の父の消息が分かるといったシリアスな展開も多かった。しかし81年から放送されたアニメでは、スパンクの登場シーンが中心となり、愛子とのドタバタな日常生活が多く展開された。

 そのため、漫画『おはよう!スパンク』は女子中高生を中心に人気があったが、アニメ化されてからはスパンクの可愛らしいキャラクターが目立ち、より幅広い年齢層から人気となった。そして、瞬く間にスパンクブームが起きたのである。

■『おはよう!スパンク』の人気理由、独特な顔立ちの擬人化した犬が話題に

『おはよう!スパンク』が人気になった理由には、何といっても愛子のパートナーである「スパンク」の存在が欠かせない。

 スパンクが登場する前の愛子の愛犬・パピーはワンワンと泣き、四つ足歩行で走る“普通の犬”だった。しかしスパンクは二足歩行で歩き、背中にリュックを背負って愛子に甘えるなど、これまでにない“擬人化された犬”で登場時から強烈なインパクトを残した。

 しかもスパンクは、ときに愛子の学校に通って授業を受けたり、給食の時間には自分でナプキンを首に巻いて食事をしたりと、まさに人間のよう。人間の言葉は話せないものの、状況に応じて「ワオーン」と可愛らしい言葉でアピールする姿に「こんな犬が本当に存在したらいいのに……!」と、当時の読者はメロメロになった。

 また四角い顔に黒い耳、いつもニコニコしているスパンクの表情は、とても親しみやすかった。筆者も幼いころ、スパンクの顔を画用紙に描いて遊んだ記憶がある。アンパンマンドラえもんのように、子どもが描きやすいキャラクターというのはいつの時代も人気なのだろう。

 こうしてスパンクは幅広い年齢の読者の心を掴み、多くのグッズが販売されるほどの人気となった。

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