『悪役令嬢レベル99~私は裏ボスですが魔王ではありません~』、『異世界でもふもふなでなでするためにがんばってます。』、『即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。』など、2024年1月スタートのアニメ作品でも「転生・召喚」を物語の軸とした作品は多い。
サラリーマンやOLや男子高校生など、主人公となるのは読者に近い年齢層がほとんどだったが、「転生・召喚」作品もさまざまなジャンルに派生しつつあり、最近では松平健さんが金色の勇者となる漫画『マツケンクエスト~異世界召喚されたマツケン、サンバで魔王を成敗致す~』や、歌手・小林幸子さんがラスボスとして魔界を再建する漫画『異世界小林幸子~ラスボス降臨!~』など、実在の人物が異世界で活躍する作品が多数、連載スタートしている。
■ゴン中山VS掛川高校『シュート!の世界にゴン中山が転生してしまった件』
ゴン中山こと中山雅史さんもそんな「転生」した著名人のひとり。
2020年のエイプリルフールに漫画アプリ『マガポケ』で“嘘ネタ”のような形でスタートした漫画『シュート!の世界にゴン中山が転生してしまった件』は、中山さんと『週刊少年マガジン』の伝説のサッカー漫画『シュート!』がコラボしたギャグ作品。
物語は一線を退いたゴン中山が、『シュート!』の世界に転生し、若い体を手に入れるところから始まる。もともとプロサッカー選手でもあり、コーチでもあるゴン中山が若い体を手に入れたことで、チームメイトを凌駕する強さを見せることとなる。
そんな中で主人公・田仲俊彦の所属するチームである掛川高校と試合をすることになるが、漫画の登場人物ならではの常識離れした必殺技の洗礼を受ける……といった内容。
ゴン中山が掛川高校の相手役、つまり漫画『シュート!』の基準で考えると、主人公の敵やライバルのようなポジションで転生するところが見どころだ。
異世界転生・召喚ものでは、大体が主人公側にチート能力があるが、転生したゴン中山は、サッカーの技術や身体能力は高いものの、あくまで常識の範囲内。対して、掛川高校の面々は、強力な必殺技や、主人公補正を駆使してくるのだ。最強の常人VS常識離れのチームのせめぎ合い。といった意外と珍しい転生漫画だ。
■太宰治が現代の三鷹市に転生『転生! 太宰治 転生して、すみません』
こちらは実在の人物と言っても歴史上の人物。佐藤友哉さんの小説を原作にコミカライズされた、太宰治の転生漫画『転生! 太宰治 転生して、すみません』だ。
内容はもちろん、太宰治が現代に転生するというもの。史実通りに玉川上水で、サッちゃんこと山崎富栄と入水自殺をした太宰だったが、その後、現代に転生してしまったのである。
すぐに現代の女の人と入水自殺をしようとしたり、芥川賞へ乗り込んで騒ぎを起こしたりと、太宰関係のネタが満載となっている。また、昭和初期で時間が止まっている人が、いきなり現代に飛ばされてしまい、戸惑うといった、タイムスリップコメディの要素も備わっている作品だ。
太宰が、ちゃんと太宰治らしい行動や言い回しをしていて、キャラクターとして魅力的な存在となっている部分がおもしろい。太宰ファンは必読だろう。