近年平成初期の漫画がリバイバル人気を得ることは少なくない。中には『美少女戦士セーラームーン』や『カードキャプターさくら』など、当時からの人気が現代に至るまでずっと続いている作品もある。
それらの作品がリアルタイムで連載されていた1990年代に少女時代を過ごしていた人たちにとって、毎月発売される『りぼん』(集英社)、『なかよし』(講談社)、『ちゃお』(小学館)などの小中学生向け少女漫画雑誌はまさにバイブル。お小遣いを握りしめて毎月本屋に行っていたという人も少なくないだろう。姉妹で別の雑誌を買ったり、友だちの家で読んだりして3誌を毎月コンプリートして読んでいたという人も多そうだ。
そんな当時の読者にとってひときわ輝いて見えたのが、「応募者全員大サービス」の存在。今回は、現在では想像もつかない方法で手に入れていた当時の応募者全員大サービスの「あるある」を振り返りたい。
■とても選びきれなった魅力的なアイテムたち
「応募者全員大サービス」では、紙製のものが多く自分で組み立てる付録とは違って、書き下ろしのイラストのついた文房具セットやお財布、バッグなどが展開されることが多かった。
大抵の場合、当時のその雑誌の目玉と言える作品から4種類程度が選抜され、読者はそれらの中から1つを選ぶ。全てが魅力的に見えるので、まず一つに絞ることがなかなか難しかった。
30代である筆者は当時3誌をコンプリートして読んでいたが、中でも『なかよし』では当時アニメも放送されていた『美少女戦士セーラームーン』が毎回ラインナップされており、このほか『怪盗セイント・テール』や『魔法騎士レイアース』『カードキャプターさくら』などアニメ化されている作品が人気だった。
『りぼん』では『ご近所物語』『姫ちゃんのリボン』『ママレード・ボーイ』『神風怪盗ジャンヌ』などが人気だったように思う。
そもそも応募者全員大サービスの仕組みとして、大抵の場合は2号分の「応募券」が必要となる。これを、漫画巻末にある自身への返送先を記入した「住所カード」と、指定金額分の定額小為替を同封して封筒に入れて発送するという仕組み。
定額小為替は郵便局の窓口でしか手に入らないもので、毎回買いに行くのに緊張した覚えがある。そもそも「為替」という言葉や仕組み自体が小学生時分には難しく、なんだか大人になった気持ちになったものだ。なお、定額小為替を同封するより前の時期には指定金額分の未使用切手を郵送していたらしい。
今思えば応募者全員大サービスの商品は破格で、本誌を買って応募券を手にする必要があるにしろ、同封する定額小為替の金額は500円分程度であった。当時の自分にとっては大金で、グッズが届くとそれがとてつもなく豪華なものに見えたのだ。
最近では少女漫画誌での応募者全員大サービスは行われていない。よくよく考えると、全国から送られてくる大量の金券を管理する出版社も大変そうである。時代の流れを感じて少し寂しくもあるが、近年では2021年3月に『りぼん』創刊65周年を記念した「応募者全員大サービス」が行われたことがある。
この企画でのラインナップは、『ちびまる子ちゃん』と『姫ちゃんのリボン』、『ときめきトゥナイト』といった歴代の名作と、連載中の人気作『ハニーレモンソーダ』。
「わたしの『りぼん』スペシャルセット」と題した、バッグ、アクリルチャーム、ハンドタオル、マスク、マスクケース、メッセージカードのセットだ。驚くべきはその応募方法。郵送ではなくシリアルコードで申し込みになっており、支払いもコンビニ決済かクレジットカード決済になっている。『ちびまる子ちゃん』などの連載当時の読者向けの企画ではあるが、応募者負担金は2750円と現代的な価格設定だった。
少女漫画では特別な機会にしか行われなくなった応募者全員大サービスだが、少年誌では現在も豪華な応募者全員大サービスが行われている。我々は大人になってしまったが、それでも応募者全員大サービスはいつの時代も我々の心をときめかせてやまないものなのだろう。