主役を引き立てる脇役は、物語では重要なポジション。アニメ『ガンダム』シリーズでは、そういったキャラクターはガンキャノンに乗りがちである。
主人公のような派手な機体に乗るわけではないガンキャノン乗りたちは、パっと見ではそれほど強そうではない。ところが、実はそれが過小評価であることは少なくないのだ。
1979年にテレビアニメ『機動戦士ガンダム』が放送されていない、現在までさまざまな作品が生まれてきた同シリーズ。今回は過小評価されがちだが、実はちゃんと強い「ガンキャノン乗り」たちを見ていこう。
■縁の下の力持ち「チャック・キース」
まずはOVA『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』に登場する、ガンキャノンの同質のポジションである「ジム・キャノンII」のパイロットであるチャック・キースから。
主人公であるコウとキースは、ベテラン揃いのアルビオン隊の中で、キャリアの浅いテストパイロットであった。そのため二人とも、最初はオロオロとした様子で、温室育ちの気弱な性格に見られがちであった。特にキースはコウよりも気が弱く、モビルスーツの操縦技術も、他に比べると経験が浅く、アルビオン隊の中では最下層に位置するのではないかという印象を抱くだろう。
しかし、実はキースはきちんと成果を上げ、コウを何度も窮地から助けている。アニメではクローズアップされてはいないが、要所要所でザクの撃墜シーンが描かれており、ザクを2機同時に撃墜するシーンまで確認できる。突出したコウの着地を待ち受けているザクを倒した場面でも、ザクを正確に射撃し撃破している。
極めつけはキースがジム・キャノンIIに乗る前、白に塗装されたザクIIに乗っていたときの初戦果だ。ドム・トローペンに岩陰からの奇襲を受けた際、キースの乗るザクIIは頭を両断されメインカメラが使えない状態になってしまう。しかし、その後にキースはヒート・ホークで反撃し、ドム・トローペンの撃破に成功している。
運の要素もあったとはいえ、実戦経験の浅いキースが一年戦争を経験したベテランのドム・トローペンを撃破することができた。彼の土壇場での対応力が光ったシーンと言えるのではないだろうか。
アニメでは、ドム・トローペン戦ぐらいで、後は目立ったシーンはない。しかし、さり気なく映る小さな活躍に注目すると、かなりの戦果を挙げていることが分かる。過小評価されているが、並のパイロットではないだろう。
■激戦を潜り抜けた強者「ビアンカ・カーライル」
漫画『機動戦士ガンダムサンダーボルト』に登場するビアンカ・カーライルも、主役の陰に隠れた強者である。ビアンカの乗機はガンキャノンの水中仕様である「ガンキャノン・アクア」だ。
ビアンカは、本編に登場する前に、すでにオデッサ作戦、ソロモン攻略戦、ア・バオア・クー攻略戦を経験しているベテランで、全身にはそれまでに属してきた部隊の多数の刺青が施されている。
初登場は、寒冷地でのゴッグ戦であった。ジオン軍残党を海中で迎撃するビアンカ。直前に1部隊を全滅させた、カウフマンの乗るゴッグと戦闘し、上記のガンキャノン・アクアは大破するものの、撃破することに成功している。
その後はガンキャノン乗りの宿命なのか、戦闘での露出は控えめとなる。しかし、水上都市リグでは、秘密裏に移動するブローバー潜水艇を、ちょっとした違和感から分析によって見つけ出す。タール火山基地制圧作戦では、主人公であるイオを救出するなど、要所要所での活躍で成果を上げている。
辛勝や、乗機の大破が多いものの、イオやダリルなどの主人公キャラの次ぐらいの強者であろうことが伺える。