10月19日午後11時9分、ロックバンド「BUCK-TICK」のボーカル・櫻井敦司さんが脳幹出血のため亡くなった。同日に横浜市内でコンサートをおこなっていたが、体調不良のため病院に救急搬送され、息を引き取ったという。享年57歳。突然の早すぎるお別れに、ファンをはじめ多くの人々から哀しみの声が寄せられている。
独自の世界観や個性的なセンスでリスナーを惹きつけてきたBUCK-TICK。熱烈なファンを公言する著名人も多く、音楽はもちろん、漫画をはじめとした他ジャンルのクリエイターに影響を与えたことでも知られる。
X(旧:Twitter)では、彼を愛し、その存在に多大な影響を受けた漫画家たちから追悼のメッセージが寄せられている。
『南国少年パプワくん』で知られる柴田亜美さんは、「ワタシの作品にも貴方をイメージして描いたキャラがいる。」「それぐらい貴方は、BUCK-TICKは多くの人間に影響を与え続けていた。」「早過ぎるよ、櫻井敦司さん。」と、苦しい胸のうちを語った。
この“キャラ”とは、『あやかし天馬』に登場する鵺・凶門(マサト)のことだろう。その長くまっすぐな黒髪と凛々しい顔立ちが、たしかに若い頃の櫻井さんを彷彿とさせる。
人気ダークファンタジー『天使禁猟区』の新章を連載中の由貴香織里さんも、「こんな経験がないのでどうしたらいいかわからない」「家族とは別の喪失感」と、ショックを隠せない。「絶対早すぎる 酷い 訳わからない」という投稿からも、その動揺がうかがえる。
由貴さんもまたBUCK-TICKの大ファンで、『天使禁猟区』単行本4巻の巻末では(バンド名や人名こそ伏せているものの)金髪時代の櫻井さんと思しき人物を描いていた。
本作そのものもファンの間では、その世界観が“BUCK-TICKっぽい”と評されていたり、吉良朔夜という登場人物のモデルが櫻井さんなのではと推測されていたりする。
菅野文さんの『薔薇王の葬列』の主人公であるリチャードもまた、櫻井さんに“激似”とされる凛々しく美しいキャラだ。菅野さんは10月25日、Xで「信じられない…」としつつ、「めちゃくちゃ飲んでめちゃくちゃ泣いた」「あっちゃんの絵を描こうかと思ったけど 私の絵の根幹には基本あっちゃんがあるから 描かなくてもさこれまでの作品全部があるからさ」と想いをつづっている。
彼女にとって櫻井さんは、創作活動はもちろん、人生そのものに影響を与えたともいえるほど大きな存在だったのだろう。
なかには、BUCK-TICKがモデルであると明言されている作品も。それが姫野くみさんによる音楽漫画『HEARTS』で、「BLUCK-TLICK」なるバンドの活躍が描かれている。
ファンの間ではよく知られた本作だが、登場するバンドのメンバーもみんなそっくりだと話題だ。姫野さんはXで本作にまつわる思い出について振り返ることで、櫻井さんを偲んでいる。“作品の中で追い求めている男性像は櫻井さんのオマージュ”だとも語っている通り、彼女もまた櫻井さんから影響を受けた人間のひとりなのだ。
表現者として鮮烈な存在感を放つ一方、私生活では心優しく穏やかで、アーティストとしてもひとりの人間としても愛され続けてきた櫻井さん。公式サイトによれば、後日ファンのために故人を偲ぶ場を設ける予定だという。