『金田一少年の事件簿』に『GTO』も…“黄金期”はジャンプだけじゃない!1997年『週刊少年マガジン』連載陣を振り返ると凄すぎたの画像
『週刊少年マガジン』1997年6月18日号 No.27
全ての写真を見る

ドラゴンボール』(鳥山明さん)、『SLAM DUNK』(井上雄彦さん)などが連載されていた80〜90年代の『週刊少年ジャンプ』(集英社)を指して、“黄金期”と呼ぶ漫画好きは多い。しかし、ほかのメジャーな漫画誌にも“黄金期”と呼ぶべき時期は存在する。

 とくに、90年代後半の『週刊少年マガジン』(講談社)はすごかった。人気連載の終了で“暗黒期”に突入した『ジャンプ』と入れ替わるように『マガジン』が台頭し、1997年11月初旬には『ジャンプ』407万部に対し、『マガジン』は415万部。発行部数で『ジャンプ』を上回ったのだ。あのころの『マガジン』は、まぎれもない“黄金期”だっただろう。

 天下の『ジャンプ』を超えた原動力はなんだったのか。今回は、1997年に『マガジン』を盛りあげた超豪華連載陣を振り返っていく。

■『はじめの一歩』に『金田一少年の事件簿』…超ロングヒットタイトルの全盛期

 1997年の連載陣で突出していた作品として、『はじめの一歩』(森川ジョージさん)と『金田一少年の事件簿』(原作・原案:天樹征丸さん/金成陽三郎さん、漫画:さとうふみやさん)の2作品が挙げられる。

『はじめの一歩』といえば、強烈なパンチ力を持つ幕之内一歩がプロボクサーとして駆けあがる、ボクシング漫画の金字塔だ。1997年では、元日本チャンピオン・伊達英二がフェザー級最強の世界チャンピオン、リカルド・マルチネスに挑戦する世界戦が中心に描かれている。

 リカルドを相手に最後まで戦い抜いた伊達が痛々しくも眩しかった名試合だ。本作のベストバウトに挙げる読者も少なくない。

 また、一歩の先輩・鷹村守の世界初挑戦編に突入するのもこの年だ。こちらも読者人気が非常に高い試合だった。1997年の『はじめの一歩』は、読者が選ぶベストエピソードが集中した全盛期といえるだろう。

『金田一少年の事件簿』も負けていない。4月に本作初の地上波テレビアニメが放送、12月には堂本剛さん主演の実写映画も公開されるなど、メディアミックスが大いに盛り上がった年だ。

 漫画本編でも「仏蘭西銀貨殺人事件」や「速水玲香誘拐殺人事件」などの長編が連載されており、安定したクオリティをキープ。読者に事件の真相を推理してもらう懸賞企画「真相当てクイズ」も好評で、日本中に本格ミステリ旋風を巻き起こしていた。

 25年以上経ったいまもヒットし続けるレジェンド漫画を2本も擁していたのが、90年代『マガジン』黄金期の強みだったといえる。

■『BOYS BE…』、『サイコメトラーEIJI』、『シュート!』も! 脇を固める中堅も看板クラス

 先の2作品が『マガジン』の看板作品ならば、縁の下から支える中堅漫画もひたすら面白かったのがこのころの『マガジン』だ。

 ラブコメなら累計発行部数2500万部を超える『BOYS BE…』シリーズ(原作:イタバシマサヒロさん、作画: 玉越博幸さん)である。1991年から連載されていた作品で、1997年は2nd Seasonがはじまったばかり。切ない青春純愛ストーリーとかわいいヒロインのお色気シーンの数々は、当時の青少年のハートを鷲掴みにしていた。

『マガジン』伝統のヤンキー漫画だと、『カメレオン』(加瀬あつしさん)に『サイコメトラーEIJI』(原作:安童夕馬さん、作画:朝基まさしさん)もこの時期だ。

『カメレオン』は、ハッタリと強運だけでのし上がっていく矢沢栄作の珍妙なギャグがウリのヤンキーコメディ。『サイコメトラーEIJI』は、残留思念を読み取る不良高校生・明日真映児が難事件に挑んでいくストーリーで、サスペンス色が強く不良要素は副次的だったように思える。

 どちらも既存のヤンキー漫画から発展を遂げた名作だ。

 定番のスポーツジャンルでもサッカー漫画『シュート!』シリーズ(大島司さん)や、柔道メインの異種格闘技ロマン『新・コータローまかりとおる! 柔道編』(蛭田達也さん)といった良作があり……と、いくら挙げてもキリがない。

 ラブコメにヤンキー、スポーツとあらゆるジャンルで秀逸な作品が揃っていたのが、1997年の『マガジン』だ。この連載陣の層の厚さこそ、『ジャンプ』を超えるエンジンだったに違いない。

■『GTO』に『哲也-雀聖と呼ばれた男』! 黄金ルーキーも続々連載していた

 のちに『マガジン』を代表する名作が新連載として世に送り出されたのも、1997年付近だ。

 学園漫画の大ヒットタイトル『GTO』(藤沢とおるさん)は、1996年12月から連載が開始された。かつて“伝説の不良”として名を轟かせた鬼塚英吉が中学校の教師になる本作。不登校や学級崩壊といった重い問題を、鬼塚が破天荒な授業でぶち破っていくカタルシスがたまらない。

 反町隆史さん主演の実写ドラマやTVアニメも人気を博し、2024年には実写ドラマの復活が告知されている。連載当時は『はじめの一歩』や『金田一少年の事件簿』にも比肩する看板漫画だったと、個人的には思う。

 少年誌で麻雀をテーマにした意欲作『哲也ー雀聖と呼ばれた男ー』(原案:さいふうめいさん、漫画:星野泰視さん)も1997年組だ。

 戦後の混乱期を麻雀の腕だけで生き抜く玄人(バイニン)を描くアウトローな作風は、大人だけでなく少年たちをも興奮させた。主人公・哲也のクールさやイカサマの迫力に、麻雀を知らないのに「カッコいい……」と憧れた人も多いはずだ。

 さらに1998年ではあるが、赤松健さんのラブコメ漫画『ラブひな』も連載をスタートさせている。連載中の漫画だけでなく新連載すらレジェンド揃いとは……黄金期、恐るべしだ。

 

 1997年に『ジャンプ』から王座をもぎとった『マガジン』は、その後、2002年まで発行部数1位の座を明け渡さなかった。

『マガジン』が日本一になれたのは、『ジャンプ』が“暗黒期”を迎えただけが理由ではない。あのころの『マガジン』は、ただ純粋に面白かったからではないだろうか。こうして当時の『マガジン』連載陣を振り返ってみると、そんな気がしてならない。

 はたして『マガジン』が再び発行部数1位に返り咲く“黄金期”は訪れるのか。今後も期待したいところだ。

全ての写真を見る