■「かぽーん」「ぶぎゅる」「ぶるういんぱるすっ」

 他にも高橋留美子氏が生み出す擬音や効果音は、どれもひねりが利いていた。有名どころでは、お風呂のシーンでよく見られる「かぽーん」という効果音。この効果音は高橋留美子氏が産みの親と言われており、銭湯や風呂場の篭った空間に響くプラスチック製の風呂桶や椅子が床に当たる音がよく表現されていた。

『らんま1/2』で子ブタになった良牙が乱馬に投げられて跳ね返っている場面で使われていた「ぶぎゅる」も、子ブタがバウンドするというシチュエーションに絶妙にマッチしている。一般的に使われないであろう言葉ながら、不思議とそれぞれの場面と効果音がカチッとハマるのは、高橋留美子氏の言葉選びが上手いからこそだろう。

 彼女の産みだす言葉には、もはやオノマトペですらないものもあった。たとえば、『うる星やつら』で諸星あたるに対してツッコミを入れる際の、「カーネルサンダース」という効果音は印象深い。そのままズバリ、実際にカーネルサンダース像で殴っていたこともあり、クスっと笑えるシーンのひとつである。

 サクラに蹴っ飛ばされたラム親衛隊の面々が編隊を組んで飛ばされていく際の「ぶるういんぱるすっ」も、インパクトが強い擬音だった。高橋氏はこの「ぶるういんぱるすっ」がお気に入りだと公言していて、『らんま1/2』でも、天道あかねや早乙女玄馬に蹴られた人々が編隊を組みながら空を飛んでいくシーンが描かれている。

 この他にも、高橋留美子作品ではたくさんの個性豊かな擬音・効果音が登場してきた。ストーリーだけを追っていると見逃してしまうこともあるが、擬音・効果音に注目しながら改めて読み返してみると、新たな楽しさが発見できるかもしれない。

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