『美少女セーラームーン』とともに雑誌人気を支えた…いくつ知ってる? アニメ化されていないものの実は名作揃いの『なかよし』漫画の画像
画像は『なかよし』1993年1月号 (C)2008-2015 Kodansha Ltd. All Rights Reserved.

 1954年12月に創刊された、現在も刊行中の漫画雑誌としては日本最古の存在である『なかよし』(講談社)。

 1980年代後半から発行部数は落ち込んでいたものの、1992年当時アニメも放送していた『美少女戦士セーラームーン』が社会現象になるほどのブームとなったこともあり、1992年末には部数も再度急増。1993年には発行部数が205万部を突破し、一時期はライバル誌である『りぼん』(集英社)を抜いた。

『なかよし』の黄金期はまさに『セーラームーン』連載時期である1992年から1997年だったといえるだろう。

『セーラームーン』の連載開始以降、同作以外にも『魔法騎士レイアース』『怪盗セイント・テール』『カードキャプターさくら』など、アニメ化されるほどのヒットとなるファンタジー系の名作は多く誕生したが、『なかよし』にはアニメ化こそされていないものの隠れた名作漫画が多く存在する。

 そもそも、月刊誌である少女向け雑誌は、読者ターゲットとなる児童が数年で雑誌を卒業してしまうことから、長期にわたる連載が難しいことは想像に難くない。そのため、10巻以内で終わる作品が大半を占めており、漫画家たちは少ない巻数で完結する作品を数多く生み出す傾向にある。

 今回はそんな隠れた名作とその作者を紹介したい。

■恋愛にホラーにギャグまで名作多数

 少女漫画といえば可愛らしい絵柄と恋愛ストーリーが多いため、『なかよし』誌面でも異色の存在だったのが松本洋子氏による『闇は集う』だ。

 同作は、さまよえる死者の魂が「闇の中のどこかの部屋」の番人に出会い、生きてきた人生を振り返って生の道へ戻るべきか・死の道へ進むべきかを決めるというオムニバス作品。ホラー要素もあるサスペンス作品で、大人向けの内容だとも言えるだろう。

 1994年からの長期連載作であり、コアな人気を誇っていたが、現在は入手困難となっている。作者の松本氏はほかにも『なかよし』でホラー作品を多く連載。『なかよし』1993年3月号の別冊付録「魔物語」に掲載された、トラウマ漫画として名高い「にんじん大好き!」も松本氏の作品である。

 続いては、ふくやまけいこ氏による『まぼろし谷のねんねこ姫』。1994年から1998年まで連載されており、かわいらしいネコのような女の子と、人間界の少女の交流を描くハートフルなストーリーだ。

 どこか懐かしさを感じる、優しくあたたかな絵のタッチと頭身が低めのかわいらしいキャラクターは、現代で連載していても人気が出そう。作者のふくやま氏は『なかよし』以外でも挿絵やイラストレーターとして多岐にわたる活動をしている。X(旧:Twitter)でねんねこ姫などのイラストが上がることもあるので、その度に懐かしい気持ちになる。

 続いては1994年から1996年の『ようこそ!微笑寮へ』(原作・遠藤察男氏)や1996年から1999年連載の『デリシャス!』(原作・小林深雪氏)など原作つきの作品がヒットしたあゆみゆい氏。1996年にはファミリーレストランのガストで作中のメニューが発売されたことがあった。

 1995年『レッツ バリボー!』や1996年〜1997年『とんでもナイト』など、 作品がアニメ化されることはなかったもののコアなファンが多く、『なかよし』には珍しく男性ファンも多かったのが小坂理絵氏。

 児童向けのファンタジー作品が多い『なかよし』の中では頭身が高くすっきりとした作画で、主人公の年齢が高校生と高めの作品が多かったのが特徴だ。またキレキレのギャグも印象的で、どの年代の人が読んでも楽しめた。

 巻数は少ないながら、見事な構成の漫画を多く生み出したのが野村あきこ氏。1995年から1996年連載の『プライベートアイズ』を筆頭に、1995年『やまとなでしこ同盟』や1997年『すてきにディッシュアップ!』など、美麗なタッチとしっかりした物語が印象的だった。

 特に『プライベートアイズ』は『なかよし』には珍しい推理もので、全3巻という少ない巻数ながら、伏線や意外な物語の結末まで全てが見事なものだった。

『やまとなでしこ同盟』『すてきにディッシュアップ!』は恋愛要素がありながらも女子同士の友情を感じるストーリーで、こんな学生生活に憧れたものだ。

 このほかにも『くるみと七人のこびとたち』『アルバイトKIDS☆GO!』の高瀬綾氏や『だぁ!だぁ!だぁ!』がアニメ化された『タイホしてみーな!』『あわせて1本!』の川村美香氏など、多くの漫画家がこの時期の『なかよし』を支えた。

 懐かしい気持ちになった人は、電子書籍などであらためて『なかよし』の隠れた名作を手に取ってみてはいかがだろうか。