25年前の本日、プレイステーション向けタイトルとして日本で『メタルギアソリッド』(1998年9月3日発売/コナミ)が発売。敵となるべく戦わず、潜入することを目的にしたステルスアクションゲーム『メタルギア』シリーズの3作目にあたるタイトルで、アメリカのビジネス雑誌『フォーチュン』に「20世紀最高のシナリオ」と称された映画的で重厚なストーリーによって世界中のプレイヤーを夢中にさせた作品だ。
戦争をテーマにした同シリーズでは、より現実に近い演出が盛り込まれた一方で、時にはテレビゲームらしいギミックに毎回驚かされる。それは没入感が高ければ高いほど効果的で、感動や興奮だけでなく、中にはトラウマ体験として恐ろしい思い出として印象に残っているシーンも数多い。
今回は『メタルギアソリッド』が生まれた記念すべき日に、プレイヤーにトラウマを与えた名シーンをいくつか振り返りたい。
■『メタルギアソリッド』ゲーム機壊れた?ヒデオ攻撃
まずは今回25周年を迎えた『メタルギアソリッド』から、ボス敵「サイコ・マンティス」との戦い。
特殊部隊“FOXHOUND”の隊員であるサイコ・マンティスは、元はソ連のKGBに所属していた超能力諜報部員で、サイコキネシスを使って物を飛ばし、リーディング能力によって心を読み行動を先回りしてくる厄介な敵。
その他には念動力によってコントローラーを振動させたり、メモリーカードの情報を勝手に読んだりとさまざまな攻撃をしかけてくるが、そんなサイコ・マンティスがプレイヤーを驚かせたのが、「ヒデオ攻撃」だ。
これはサイコ・マンティスが「ブラックアウト!」と叫んだ瞬間に、「ピー」という音とともに画面が真っ暗になり、右上端に“ビデオ”ならぬ「ヒデオ」という文字が表示されるというもの。当時はゲーム機の外部入力をビデオ端子に接続していたため、それまでの彼の珍攻撃もあってか、まるで本当にチャンネルが切り替わったかのような錯覚を受ける攻撃だ。
今では考えられないが、当時はゲームがバグって止まる=データが全て消えてしまうという認識が非常に強かったため、ブラックアウトした瞬間に「終わった……」と感じたプレイヤーも多かったのではないだろうか。アナログ的な手触りが残っていた時代の、遊び心が詰まったトラウマ演出だ。
■『メタルギアソリッド2』珍言連発のロイ・キャンベル大佐
続いては2001年の『メタルギアソリッド2 サンズ・オブ・リバティ』より。
単独潜入捜査を行う同シリーズでは、無線を使って司令塔であるロイ・キャンベル大佐や他の登場人物にアドバイスを求めることができる。これは初見では全く分からないギミックや攻略法に関するヒントが得られる重要なシステムで、無線を利用したミッションなども多数描かれてきた。
有用な情報を提供してくれるものと思いきや、『メタルギアソリッド2』では物語を進めていくにつれて、大佐の無線連絡が不自然なものになっていく。
前作から引き続きプレイしていないと気づかないような細かいものもあるが、終盤になると明らかにおかしいものに。「川西能勢口、絹延橋、滝山、鴬の森……」と駅名を突然呟きはじめたり、「らるりれろ!らりるれろ!!らりるれろ!!!」と叫んだり、「雷電、今すぐにゲーム機の電源を切るんだ! 任務は失敗した、今すぐ電源を切れっ」と命令したり、それまでの大佐にはなかった支離滅裂なことしか話さなくなる。
『メタルギアソリッド』は、スニーキングミッションというゲームの特製上、孤独で戦う緊張感が付きまとう。そんな仲間のいない状況で、敵の本陣に侵入する緊張感を少しでも緩和してくれるはずの無線相手が支離滅裂なことを話し出す姿はもはや恐怖でしかない。
実は物語の序盤から通信していた大佐は全て偽物で、AIによって作り出されたものであった。
これこそが物語の核心に迫る内容ではあるのだが、その後の主人公・雷電の味わう絶望感も含めて非常にトラウマな展開となっている。
■『メタルギアソリッド3』戦うのが嫌になる「ジ・エンド」
絶望的な展開やショッキングな映像など、ゲームにおけるトラウマ体験にも種類がいろいろあるものだが、「もう嫌だ!」となるほど難易度が高かったボスといえば『メタルギアソリッド3 スネークイーター』(2004年)の「ジ・エンド」戦を思い出す人も多いだろう。
ジ・エンドは100歳を超えたヨボヨボの老人なのだが、実は「狙撃の父」と呼ばれた伝説のスナイパーであり、気配を絶つ達人。スネークは森のどこかで待ち伏せをするジ・エンドを長期戦覚悟で探し出すことになる。
長距離から射撃をしてくるジ・エンドに怯えながら森や小川を彷徨い、異様に広いフィールドをひたすら探し回る。相手は森とほぼ同化しているため、赤外線ゴーグルを駆使して居場所を突き止めなければならず、とにかく探すことに苦労する。さらに見つけて攻撃すると場所を移動してしまうため、また広大なフィールドから探さないといけない。
実はある小技を使うと簡単に倒すことができるのだが、通常プレイをしているだけでは見つけることは難しく、ひたすらかくれんぼの応酬が続くためボスと戦っている感覚はほとんどない。
『メタルギアソリッド3』を始め、シリーズにはこのように初見では解析が困難なボスが多く登場するが、よりリアルな極限のサバイバルを楽しむことができる点も本シリーズの魅力だろう。
以上、3作品から衝撃的だったシーンを振り返ったが、重厚なストーリーに没入してしまうからこそこうした演出が心に響く。『メタルギアソリッド』が25周年を迎えた今年、10月24日には、『1』から『3』などを収録した『メタルギア ソリッド:マスターコレクション Vol.1』(PC / PS5 / Xbox Series X|S / Nintendo Switch)が発売予定。また『3』のリメイク作品『メタルギアソリッド デルタ:スネークイーター』の発売も発表されている。これから先も多くの人を魅了していくであろう、シリーズの先の展開も待たれる名作だ。