『ぼくらの七日間戦争』や『刑事物語2』も…あの頃に戻りたくなる“80年代の夏休みに公開された懐かしい邦画”の画像
『ぼくらの七日間戦争』角川映画 THE BEST [DVD](KADOKAWA / 角川書店)

 筆者の家庭だけではないだろうが、夏休みに入ると子どもたちは宿題そっちのけでゲーム三昧になってしまうものだ。まあ、かくいう筆者も勉強が大嫌いだったので、あまり強くは言えない。

 そこで今年も、子どもたちを引き連れて映画館へと赴いた。アニメ好きの子どもたちはあまり実写映画を観ないのだが、筆者が小学生だった当時はよく観ていたものだ。そこで、ちょっと懐かしい思い出に浸りつつ、80年代の夏休みに公開された邦画を振り返ってみよう。

■理不尽な大人たちに反抗! 自分たちの居場所が大切だった『ぼくらの七日間戦争』

 1988年8月に公開された映画が、1985年に発売された宗田理さんによる小説を原作にした『ぼくらの七日間戦争』だ。理不尽な拘束や暴力で中学生を支配してくる教師たちに嫌気が差し、主人公の菊地英治ら男子8人(途中から女子3人も合流)が廃工場に立て籠りを決めるというストーリー。

 作中では生徒に平気で体罰を繰り返す教師たちが登場する。今の時代だと驚愕だろうが、当時はそんな学校もあったのだ。

 天然パーマの生徒に対して一向に話を聞かず胸ぐらをつかんで体育館から連れ出し、水道水で髪の毛を洗おうとする体育教師。いや、怖すぎだろう……。

 反骨心から、子どもたちが家出するシーンはなにかと羨ましかったな。筆者の少年野球チームは軍隊並みの規律で上級生や監督らに何度も殴られて悔しかったし、親も「お前が悪い」の一点ばり。筆者と同じようにこの映画を観て、家出に憧れた人は少なくなかっただろう。

 それにしてもこの映画は面白かった。同世代だった筆者にとってリアルに共感できた。今となっては淡い青春なのだろうが、中学生の“どこかに抜け出したい”と思う気持ちや背景をよく捉えていたと思う。

 仲間同士、時に衝突もしながら理解し合い、連れ戻しにきた先生や機動隊員に結束して反抗する。先生たちには仕返ししても良いとして、ただ、機動隊員を懲らしめるのはちょっと違うかなって思ったりもしたな。

 本作の主題歌は、TM NETWORKの「SEVEN DAYS WAR」。令和の今聴いても名曲で、小室哲哉さんは本当に天才だと思ってしまう。

 そして、なんといってもヒロインの宮沢りえさんが可愛すぎた。彼女にとって女優デビュー作となった本作。あんなタンクトップ姿で一緒の空間にいたら、そりゃ中学生の男子なんて簡単に恋に落ちてしまうだろう。

 さらに、八代先生役の佐野史郎さんが良い味を出していた。“672年 天下取るむねに 壬申の乱”を覚えさせてもらったものだ。

■「ちが~う! 木のやつ!!」憧れのハンガーヌンチャクと別れのシーンに泣けた『刑事物語2 りんごの詩』

 1983年7月に公開されたのが、武田鉄矢さん主演の『刑事物語2 りんごの詩』だ。

 ジャッキー・チェンさんが大好きだった筆者にとって、カンフー映画を意識していたであろう『刑事物語』はとても興味深く、アクションだけでなくコミカルで感動できるストーリーが素晴らしかった。当時、映画館やテレビで観たときも感動したが、大人になってから再度見返し、涙腺崩壊したものだ。

 熱血漢の主人公・刑事の片山元は普段は冴えない男だが、拳法「蟷螂拳」の達人だ。シリーズ2作目である本作は、片山刑事の異動先である青森県弘前市を舞台に繰り広げられる。

 2年前に北海道で起きた銀行襲撃事件で現場にはりんごの種が残っており、捜査協力を受けた片山。りんご試験場へ赴き、そこで試験場技官の石戸谷忍と恋に落ちる。この女性がまた綺麗なこと。筆者をはじめ、彼女に恋した小学生は多かっただろう。

 しかし、その後なんと彼女は犯行グループの襲撃に鉢合わせて死亡してしまう。事件後、襲撃現場で警察は彼女の遺体の跡をチョークで描くのだが、片山は「あの子が死ぬわけないだろが~!」って白線を必死になって消そうとするのだ。これには泣けた……。

 また、本作では母子家庭で育つ少年・タケシとその母親との温かい交流も見どころだった。しかし、実は母親は犯行グループの一員という衝撃的展開が待っているのだが……。

 ちなみに、本作での超有名な名セリフ「ちが~う! 木のやつ〜っ!」は、タケシがプラスチックハンガーを2階から放り投げたシーンで生まれたものだ。ハンガーヌンチャクにみんな憧れたな。

 最終的に母親は自首を決意するのだが、タケシは母親を守ろうと片山に断固立ち向かっていく。それに対して真摯に向き合い、応戦する片山の姿も印象的だった。そして、ラストでタケシが施設に自ら入って行くシーン……。いや、切なすぎたな。

 エンディングテーマは吉田拓郎さんの「唇をかみしめて」。哀愁漂うこの歌と作品のもの悲しさが見事にマッチしており、もう涙が止まらないものだった。

 

 映画というのは本当に素晴らしいものだ。夏休みに公開される映画はとくに予告編が多かったので、印象に残っている。ほかにも『瀬戸内少年野球団』や『時をかける少女』、『ハチ公物語』など多数あるので、また機会があれば紹介していこう。

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