漫画をアニメ化する際、通称“アニオリ”と呼ばれるアニメオリジナル回やキャラクターが登場することはざらにある。とくに『北斗の拳』(原作:武論尊氏、作画:原哲夫氏)はアニオリが多いことで有名だが、逆に原作で登場したキャラクターがアニメでは登場しないことも……。なかには「あのキャラクターはぜひ登場させてほしかった!」と思うような有名なキャラクターもおり、それだけにファンのがっかり度も高い。今回は、ぜひアニメでも活躍を見たかった有名キャラについて紹介する。
■「あべし!!」の断末魔で人気の元プロボクサー
独特な断末魔で有名な『北斗の拳』だが、なかでも「あべし!!」は一、二を争う人気だろう。このセリフを吐いたのは、原作の第20話に登場した元プロボクサーの男で、『北斗の拳 ONLINE』では“スコルピオ”という名がついていた。
彼は、バットの村を襲ったジャッカルの手下だ。ケンシロウ相手に退却を命じるジャッカルに反して「おれが殺ってやりますよ」と出しゃばった挙句、元プロボクサーであることをひけらかしてケンシロウを挑発、さらに「チビヤロウ」扱いまでした。
これにはケンシロウもイラついたのか、「おい こいつから殺していいのか」とジャッカルに確認をとった後、一瞬にして北斗断骨筋の秘孔を突く。スコルピオは腕の先から徐々に骨を砕かれ、最後に顔面が潰れるときに「あべし!!」という断末魔を残すのだった。
坊主頭の地味な見た目に反して強いエピソードを持つキャラだが、残念ながらアニメ版ではこのシーン自体がカットされており、彼の出番はない。幸い「あべし!!」は、ほかのモブキャラたちが使い倒していたものの、アニメ版でも活躍が見たかったキャラの1人だ。
■リンが目覚めるのを待っていたサモトとヌメリ
“ハート様”、“ジャギ様”と並んで「様」付けで親しまれるサモトは、西洋貴族風の衣装にカイゼル髭、登場時の効果音が「キラキラ」という、本作ではあまり見ないタイプの修羅だ。
彼は部下に嫁探しをさせている途中、死環白(突かれた者は記憶を失くして気絶し、目覚めたとき最初に見た者にすべての情愛を捧げる秘孔)を突かれたリンを発見。涎を垂らしながら目覚めるのを待っていたが、後から現れたヌメリにデコピン一発で殺された。そのヌメリも、目覚めの秘孔を突いてリンを起こそうとするものの、今度はヒョウに阻止されて殺される。
アニメ版では、サモトという名でヌメリの姿をした嫁探し中の修羅が、リンを見つけて目覚めの秘孔を突こうとするがヒョウに殺される……と、無理やり統合された形で登場した(第149~150話)。
名前や嫁探し設定こそ使われているが、高貴な恰好に下品な言動というギャップや、驚くほどのザコさなど、サモトにとっての“アイデンティティ”とも呼べるものが何一つ描かれなかったのが残念だった。
■「あっついぜ~!!」でお馴染みの火炎放射器隊
火炎放射器といえば「汚物は消毒だ~!!」という名言を残したモヒカンが思い浮かぶが、原作の第198話で泰聖殿に向かうケンシロウの前に現れた敵もまた、火炎放射器を持っていた。
3人並んで防火服に身を包み、汗をだらだら流しながら「あっついぜ〜~!!」「あつくて死ぬぜ~〜!!」という印象的なワードを残したが、3人まとめて一蹴りでやられたうえ、火炎放射器の爆発で死んだ。
残念ながら、アニメ版ではこのシーンもカット。火炎放射器は本作のシンボルでもあるので、セリフもあわせて、ぜひ使ってほしかった。
しかし、1988年から稼働していたアーケードゲーム『ならず者戦隊部隊ブラッディウルフ』の中ボス戦では「アツイゼ アツイゼェー アツクテ シヌゼェーッ!」というセリフが使われており、アニメとは違うところでセリフ自体は生き続けていることに、あらためて『北斗の拳』の影響力の大きさを感じる。
あらためて『北斗の拳』を振り返ってみると、たった数コマしか登場しなかったモブキャラもパワーワードを残し、それをファンが拾って長く使い続け……というシーンの多さに驚く。愛され続けた作品ならではの、「アツい」ところだろう。