１９７９年に放送が始まったアニメ『機動戦士ガンダム』以降、現在まで数多くの作品が生まれてきたガンダムシリーズ。
ウェイブライダー形態のＺガンダムに突っ込まれた『機動戦士Ｚガンダム』のパプティマス・シロッコ。戦場ではなく、ヒットマンによる暗殺で殺害された『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』のオルガ・イツカ。『ガンダム』シリーズには、他にも印象的な最期を迎えたキャラクターは数えきれない。
それは物語の主人公サイドや敵サイドのメインとなる人物だけでなく、ほんの数話の登場となる脇役キャラでも同じこと。主要人物ではないキャラなのに、視聴者に強烈な印象を与えた死に様を見せた人物は多い。
■グラブロ戦より印象的だった『機動戦士ガンダム』ミハル・ラトキエ
まずは初代『機動戦士ガンダム』より、ミハル・ラトキエだ。
彼女は地球連邦軍のベルファスト補給基地の郊外に住む民間人の少女で、まだ幼い弟と妹を養うためにジオン公国軍のスパイとして活動していた。たまたま出会ったカイ・シデンとの接触により、ミハルはホワイトベースに潜入するのだが、そこで年端のいかない民間人の子どもたちが乗っている事実に驚く。
カイとミハルは、お互いに恋愛を意識するようになりつつ物語は進んでいく。そして、２８話「大西洋、血に染めて」の終盤の戦闘で、ジオンと戦うことを決意。カイとともにガンペリーに乗り込み出撃する。
スパイが自軍との触れ合いを経て仲間になる展開は、それほど珍しいものではないだけに、このままミハルが仲間になるのではと思った人は少なくないのではないだろうか。しかし、不具合によって発射できないミサイルを手動で起動させたミハルは、慣れない操作によってミサイルの爆風に巻き込まれ、はるか大西洋へ飛ばされてしまうのだ。
ホワイトベースの新たなクルーとなる直前、カイ・シデンとの淡い恋愛のさなか、ロボットアニメらしからぬ事故死によって、唐突に散っていく。そのような突然の展開は今見返しても衝撃を受ける。ホワイトベース潜入シーンが多いため、ミハルに連邦制服のイメージが大きい点も、ただのゲストキャラではない悲しい印象を残す理由だろう。
このエピソードは劇場版でも描かれるが、テレビシリーズでのミハルはわずか３話の登場。同時並行で繰り広げられたガンダム対グラブロの対決が霞むほどに印象に残る最期だった。
■地球の魔女の叫び『水星の魔女』ソフィ・プロネ
『機動戦士ガンダム 水星の魔女』にて、新たなガンダム「ガンダム・ルブリス・ウル」に乗り、地球の魔女としてメインキャラクターの前に現れたソフィ・プロネ。鳴り物入りでの登場が印象深いキャラクターだ。
彼女はシーズン１の終盤に登場し、主人公スレッタ・マーキュリーのライバル的存在になるかと思われたが、シーズン２の２話である第１４話「彼女たちのネガイ」での怒涛の展開で命を散らすこととなった。
厳しい環境となっている地球に生まれたソフィは、欲しいもののために人を殺すことを決意。お腹いっぱいのご飯やコミックやゲーム、そして家族を欲して戦っていたのだった。
そんなソフィだが、ガンダム・エアリアルのデータストーム内にいたエリクト・サマヤによって搭乗機「ルブリス・ウル」がハッキングされ、機体との接続レベルが急上昇。その負荷により体を侵食されることとなる。そして壮絶な悲鳴をあげ、吐血しながら死んでいくこととなった。
シーズン２の壮絶な展開を予期させるソフィの散り様だったが、『水星の魔女』は結果的に『ガンダム』シリーズでは死者が少ない作品。その分、彼女の断末魔の叫びが印象に残っているという視聴者は多いだろう。
■散り際に名セリフを遺した『機動戦士Ｖガンダム』ワタリー・ギラ
数話しか登場していないものの最期の姿が印象的だったキャラといえば『機動戦士Ｖガンダム』に登場したワタリー・ギラも欠かせないだろう。
ワタリー・ギラは、敵組織であるベスパのパイロットだ。諸々の理由で、部下を２人粛清してしまった彼は、その原因を作ったＶガンダムを憎み、戦いを挑むこととなる。しかし撃墜されて、主人公ウッソ・エヴィンと顔を合わせると、「おまえが白いモビルスーツのパイロットだと言うのか……！」とウッソが年端も行かない少年だということに衝撃を受ける。
そしてワタリーは両目から涙をこぼし、「まだ遊びたい盛りの子どもが……こんなとこで、こんなことをしちゃあいかん！ 子どもが戦争をするもんじゃあない。こんなことをしていると、皆おかしくなってしまう」と声を震わせながら叫んだ。その後、「現実はこんなに残酷とは」と、手榴弾を取り出し自害することとなった。
このエピソードが描かれたのは作品序盤となる第６話「戦士のかがやき」。この衝撃的なワタリーの死は、その後の『Ｖガンダム』の展開を暗示させる、あまりにも不穏なものであった。
以上、印象的な最期を迎えた『ガンダム』キャラを３人ピックアップした。どのキャラクターも「もし生きていたらどうなっていたか」を想像してしまうような人物ばかりだ。
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