『魔法使いサリー』に『クリィミーマミ』ゾッとするほど怖かった!? 今考えるとヘビーな昭和の魔法少女アニメのトラウマ回の画像
『魔法使いサリー』DVD BOXより

 アニメ『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』の新情報が9月10日開催の「Aniplex Online Fest 2023」にて発表される。2021年の『魔法少女まどか☆マギカ(以下、まどマギ)』10周年イベントで制作発表されて以降、多くのファンが待ち望んだ続報だ。

 2011年にテレビ放送された『まどマギ』は、ポップな絵柄とタイトルなどで一見「かわいい魔法少女たちの物語」と思いきや、実はドミノ倒し式に起こる悲劇的展開によってファンの心をエグり続けた人気作品。そんな『まどマギ』以降、『魔法少女育成計画』(2016年)や『魔法少女サイト』(2018年)など、深夜枠で放送される「魔法少女」たちのトラウマ必至なアニメが増えたように思う。

 とはいえ、昭和の魔法少女をふり返ってみても、子どもだった当時はおろか大人となった今でもダメージを負ってしまうようなヘビーな話がいくつも存在する。今回は、今なお語り継がれる昭和の魔法少女「トラウマ回」をいくつか紹介したい。

■魔法や何もかもが夢? 記憶を消されてすっかり他人になる喪失感…『魔法使いサリー』

 最初に紹介するのは、「魔法少女」や「魔女っ子」アニメの先駆けとも称される『魔法使いサリー』第1期(1966年~)から、それまでの記憶が消され“他人"となってしまう第108話「ポロンの子守歌」のエピソード。

 ポロンは76話から登場するサリーの妹的存在で、お団子頭が特徴のかわいい魔法使いの女の子。だがその正体は、サリーたち魔法の国の住人とは違う、普通の人間の子どもだった。

 実はポロンは捨て子で、サリーのパパ(王様)に人間界で拾われ魔法の国の住人として育てられたのである。しかし、寝ているときには人間に戻るため、右手に目印となる赤いクローバーの痣が浮かぶのだ。それを知ったサリーはポロンを本当の両親のもとに帰すべきだと考え、人間の家でポロンが魔法を使うたびに無効化し、自分たちや魔法の国の記憶を消してしまうのである。

 今まで当たり前に使えていた魔法が使えなくされ、魔法の国や魔法の記憶も「夢」で片付けられたポロンの戸惑いは、子ども時代の自分に置き換えると今なお恐ろしい。また、ポロンを奪われまいと奮闘したカブたちを忘れ、すっかり他人となったポロンの様子に大きな喪失感を覚えた。

 他にも、いじめっ子に花壇を踏み荒らされた「ポニーの花園」、火事を消すため身を投げ出した「ミスター雪だるま」など、本作にはトラウマとともにホロリとした話も多かった。

■ホラー展開に心臓バクバク? 子どもたちのトラウマになった伝説のホラー回…『魔法の天使 クリィミーマミ』

 1983年から放送された『魔法の天使 クリィミーマミ』は、歌と魔法を融合させた魔法少女アニメ。今年で40周年を迎えたことで、東京・大阪での記念展やコラボカフェなどが開催され、今も多くのファンに愛され続けている作品だ。

 本作は小学生の森沢優が人気アイドル・クリィミーマミへと魔法で変身し、正体がバレないようにしながら芸能界での二重生活に奔走するコミカルな物語。ところが、そんな作中で子どもたちにトラウマを植え付けたのが、第37話「マリアンの瞳」である。

 マミは伝説のウェディングドレス「マリアンの瞳」に関わったことにより、いくつもの不可解で恐ろしい出来事に遭遇してしまう。実は、ドレスの最初の持ち主であるマリアンは非業の死を遂げており、そのため「マリアンの瞳」を着た者はその呪いで亡くなってしまうのだ。自分と肖像画のマリアンが瓜二つであるなど、マミが体験した恐怖はそのまま視聴者のトラウマにもなった伝説のホラー回だ。

 特に「ダン、ダン」と追い詰められるような効果音、血だらけのめぐみさんの姿に子どもだった筆者は「ひぃぃっ!」と悲鳴をあげるほど怖かった。

■本当の最終回? 魔法少女がトラックにひかれた理由…『魔法のプリンセス ミンキーモモ』

 1982年放送のシリーズ第1作『魔法のプリンセス ミンキーモモ』は、夢と魔法の国・フェナリナーサから地球に来たミンキーモモが、魔法の力でプロフェッショナルな大人に変身し活躍する物語。

 モモの声を担当した小山茉美さんの軽快なセリフまわしにより、物語はテンポよく進むコミカルで楽しい作品であったが、多くの視聴者が思わず「えっ!」と顔面蒼白になったのが第46話「夢のフェナリナーサ」だ。魔法の力とペンダントを失ったモモは、地球における両親のもとで人間として平凡な日々を過ごしていたが、突然トラックにひかれて死んでしまう。

 どんな高い場所からも変身姿で見事着地し、仲間たちと数々の冒険に挑み、時には合体ロボットでさえ操縦してみせた魔法少女のモモが……である。当時子どもだった筆者は、生き返ることなくモモが死んだこの回に頭が疑問符だらけになった。

 実は、本作は当初全52話の予定であったが、おもちゃの売り上げ不振により第46話での終了が決定。その経緯から第43話以降は不穏な展開へと移行し、遂には主人公が“おもちゃを積んだ”トラックにひかれるという皮肉な最後で終わるはずだった。

 ところが、本作の放送事情は再び一転する。最終回となるはずの第46話制作中に打ち切りが撤回され、最終的に全63話と半年近くも放送が延長されることとなったのだ。前述したように筆者がモモの死に疑問符だらけになったのも、すでにアニメ雑誌などで新シリーズ(実は延長)を知っていたからである。

 その後、スポンサーからのテコ入れを作品に流し込みながら、『ミンキーモモ』は脚本家・首藤剛志さんにより最終回(第63話)から問題の第46話へと見事なバトンを繋いだのだ。

 とはいえ、作画クオリティやシナリオなどから「第46話こそ本当の最終回だ!」と思うファンも多く、結果的に本作でもっとも有名かつ人気のトラウマ回となった。

 以上3作を振り返ったが、『魔法使いサリー』のなかで、交通事故で天国に旅立った友だちに会いに行くため死のうとする少年の話が今も印象に残っている。その中で、サリーは事故の要因となるトラックを魔法で排除しようとするのだが、彼女の母親が「トラック運転手の家族がご飯を食べられなくなる」と娘の過ちを正した。

 魔法でさえ万能ではないのだと、魔法少女のトラウマ回は、こうしたどうしようもない事実を私たちに伝えようとしているのかもしれない。