知って驚くジブリ『もののけ姫』の裏話…幻の“キャッチコピー”にアシタカの“消えなかった腕のアザ”の理由もの画像
© 1997 Studio Ghibli・ND

 1997年に公開されたスタジオジブリ作品の『もののけ姫』。「生きろ。」のストレートなメッセージが込められた本作が、人々の心に焼きついて離れない名作であることはご存じの通り。公開から26年という月日が経ったが、地上波での放送はこれまでに12回と、その人気は健在だ。

 そんな本作だが、実は制作陣が裏話をポツリポツリと明かしてくれている。作品を見るだけではわからない裏話は、知ると驚くようなものばかり。そこで今回はこれらの裏話たちをご紹介していこう。

■アシタカの腕のアザが消えなかったのはなぜ?

 スタジオジブリの公式ツイッターアカウントに“アシタカの腕のアザが残っているように見えるのはなぜか?”という質問が寄せられた。

 たしかにシシ神に出会い、アシタカは生きることを許された。しかし彼が受けたタタリ神の呪いの証であるアザは完全に消えることはなく、うっすらと残ったままラストシーンをむかえているのだ。

 これに対しスタジオジブリは、「痣が薄く残っているのは、呪いが完全に消えてはないからです。」と返答していた。

 さらに座談会にて宮﨑駿監督は、“今の若者はハッピーエンドにむしろ納得しない”と、独自の見解を明かしてもいた。そのため、アザがうっすらと残っていることで“いつ再発するかわからない”という試練を抱えながら、アシタカがこれから生きていくのだというラストシーンを描いたという。

 すべて治ってハッピーエンドではなく、不安を残しつつもそれでも生きていくという、よりリアリティのある結末を描くことで、多くの人に響く作品にしたかったのかもしれない。

 アシタカはカヤを守るために呪いを受けたわけだが、善行であれど神には手をあげてはいけない。それを破った代償は大きかったということだ。本編を見ると、あれだけの出来事があって命があるだけまだ良かったのではないかと思う。

■キャッチコピー「生きろ。」は最初は違う言葉だった?

 ポスターに書かれている「生きろ。」という言葉のインパクトは絶大だ。本作を象徴するかのようなこのキャッチコピーだが、じつははじめの案では違う言葉が考えられていたという。

『もののけ姫』でキャッチコピーを担当したのは、スタジオジブリ作品のキャッチコピーを10年近く担当していた糸井重里さんだった。

 それまで糸井さんはキャッチコピーを作成する際、すんなりとできていたそうなのだが、『もののけ姫』では難航してしまったのだとか。幾度となく鈴木敏夫プロデューサーとの協議を重ね、ようやく生まれたのが「生きろ。」という強烈なこの言葉だった。

 ちなみに最初の案は「おそろしいか。愛しいか。」というものだったことが2021年8月13日に投稿された公式ツイッターアカウントで明かされていた。「生きろ。」に比べるとインパクトは弱いのかもしれないが、これはこれでロマンを感じてしまうのは筆者だけだろうか……。

■エボシは死ぬ予定だった…!? ラストに込めた監督の想いとは

 本作における“悪役”であるエボシ。彼女はタタラ場を築き、身売りされた女性たちや病を患っている者たちも差別することなく受け入れるなど、彼らを救った救世主のような存在でもある。

 しかしエボシは“シシ神狩り”を先導し、“神殺し”という禁忌を犯す。そんな大罪を犯したエボシのラストについて、鈴木プロデューサーは「死んでもらわなきゃ困る」と主張していたそうだ。

 しかし、宮﨑監督が描いたエボシの最後は“生き残る”という選択だった。これは宮﨑監督の「生き残る方が大変だと思っている」という思想からのラストだったという。(TECH WIN10月号別冊/VIDEO DOO!vol.1より抜粋)さらに、“死ぬならもっと壮烈に闘わなければ”と、宮﨑監督は考えていたことを明かしている。

 悪役が壮絶な闘いの末に命を落とすラストシーンは、あまりにありふれている。そんな“ありきたり”な結末ではなく、まさに映画のキャッチコピーの「生きろ。」のメッセージのように、自らの犯した罪を背負いながらも生きていく試練をエボシは課せられたように思う。

■サンの顔の模様は化粧ではなく刺青だった!

 本作のキーパーソンとなる“もののけ姫”こと、サン。彼女は幼いときに人間に捨てられ、以降、山犬・モロに育てられたという数奇な運命を背負う少女だ。

 そんなサンの顔には額と両頬に赤い模様が施されているが、実はこれは化粧ではなく刺青であることが明かされている。(『ロマンアルバム もののけ姫』(徳間書店))

 サンにとっては刺青もまた仮面と同様に、人間というカテゴリーから離れるための手段だったのかもしれない。山犬になりたいと願う彼女が自ら彫ったのだと考えると、あまりに切ない。

 ロマンアルバムでは「決して流さぬ涙の代わりなのかも知れない。」と締めくくられており、人間でありながら山犬として暮らすサンの苦悩が痛いほど伝わる裏話だった……。

 

 今もなお色あせない名作『もののけ姫』。“自然と人間の共存”を描いた作品で、太古の神々や驚くほど大きな姿の動物など壮大なスケールの物語が描かれている。

 作中では監督の思いがそこかしこに散りばめられており、当時の制作陣のインタビューなどを読むとそれらの片鱗に触れることができる。

 ところで、7月14日に公開されたスタジオジブリ最新作『君たちはどう生きるか』も大ヒット中だ。時を経て、同じように裏話が明かされるのだろうか。それも含めて、これからも作品を楽しんでいきたい。

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