さまざまな漫画作品が実写映画化されているなかで、原作のギャグテイストな表現にあわせ、俳優たちの一糸まとわぬ姿が登場する作品も数多く公開されている。原作再現とはいえ、俳優たちの体当たりな演技が目を引いた実写映画作品について見ていこう。
■強烈な作風で描かれる“珍道中”を見事に再現!『珍遊記』松山ケンイチ
漫☆画太郎さんといえば、濃厚かつ独特な絵柄が特徴的で、そのインパクト大な作風から唯一無二の存在感を放っている漫画家だ。
数々のヒット作を世に生み出してきた漫☆画太郎さんだが、まさかの実写化を果たしたのが1990年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載されたギャグ漫画『珍遊記 ー太郎とゆかいな仲間たちー』を原作とし、2016年に公開された『珍遊記』である。
『西遊記』をモチーフとした作品なのだが、主人公・山田太郎をはじめ滅茶苦茶なキャラクターが多数登場し、下ネタや他作品のパロディを盛り込んだ破天荒な展開が続く。
本作の実写版にて主演を務めたのは、実力派俳優として数多くのドラマや映画で活躍する松山ケンイチさんだ。松山さんはほかにも『デスノート』や『デトロイト・メタル・シティ』など、漫画原作の実写映画に数多く出演していることでも知られている。
主人公・山田太郎を演じるにあたり、松山さんはハゲカツラを身につけているのだが、加えて虎柄パンツ一丁や生まれたままの姿というあられもない姿を映画のなかで披露している。また、作風ゆえに変顔やお尻のアップなどのシーンもあり、下ネタ全開なセリフも盛りだくさん。
今まで松山さんが演じてきたほかのキャラクターに比べれば、本作の太郎はまさに“下品”を絵に描いたような人物なのだが、それでも全身全霊でセリフや立ち回り、そしてギャグの数々を繰り出す姿はさすが実力派俳優と言わざるをえない。
本作では原作に登場しないオリジナルキャラクターも多数登場しており、有名タレントも多く起用されている。実写化不可能とまで言われていた漫☆画太郎さんの強烈な作風を、松山さんの熱演によって見事に再現してみせた渾身の一作だ。
■男たちが繰り広げる青春劇…『ぐらんぶる』竜星涼、犬飼貴丈
2014年から『good!アフタヌーン』(講談社)にて連載された、原作:井上堅二さん、作画:吉岡公威さんのタッグ作品『ぐらんぶる』は、スキューバダイビングを題材にしつつ、サークルの破天荒な活動風景も描いたちょっと奇抜な(!?)青春群像劇だ。
本作の登場人物はスキューバダイビングへの情熱はもちろんのこと、なぜか“裸”になることに対して異常なほどの熱意を見せる人物が多い。全編通して生まれたままの姿の登場頻度が目立つコメディ作品のため、実写映画化は困難だろうと思われてきた。
しかし、そんな本作は2020年に満を持して実写化される。作中では終始サークルから脱退し田舎に帰りたい……と奮闘する主人公・北原伊織を俳優の竜星涼さんが、伊織の同級生であるメインキャラクター・今村耕平を犬飼貴丈さんがそれぞれ熱演。
前述のとおり、原作では至るシーンで登場人物たちの服を着ていない場面が描かれるのだが、映画版でもそれらは健在だった。サークルの飲み会でのバカ騒ぎはもちろんのこと、一糸まとわぬ姿でキャンパスの椅子に座る二人や、砂浜で堂々と一糸まとわぬ姿を披露するシーンも登場する(無論、モザイクをフル活用している)。
スキューバダイビングに打ち込むシーンよりも登場人物たちがバカ騒ぎをしているシーンが大半を占める本作において、ダブル主演となる竜星さんと犬飼さんの両名はこれでもかとその肉体美を見せつけ、無茶苦茶な先輩や環境に翻弄される二人の学生を演じ切った。
ハメを外す男たちの姿が滑稽でありつつ、それでいて男たちの“友情”や痛快な“青春”の日々に胸打たれてしまうのは、原作漫画の良さを見事に再現できているからだろう。観る者の心を不思議と掴み引きずり込んでしまう魅力を持つ一作だ。
■その立ち振る舞いはまさに真選組・局長! 『銀魂』中村勘九郎
2004年より『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載された空知英秋さんの『銀魂』は、その絶大な人気からアニメ化、映画化とさまざまなメディア展開を続け、2017年、2018年には小栗旬さんを主演に実写映画化も果たしている。
SFと時代劇の融合した独特の世界観はもちろんのこと、熱いバトル展開の随所に盛り込まれた強烈なギャグも本作の見どころの一つ。とくに“下ネタ”の類も非常に多く、なにかと際どいシーンも登場する。
なかでも驚きのシーンを演じたのは、真選組のリーダー・近藤勲役に抜擢された中村勘九郎さんだ。近藤は真選組を率いる局長という実力者でありながら、なにかと下ネタも多いキャラクターで、実写版でもその変態っぷりは健在だった。
とくに、近藤が服を着ないで木刀の素振りを続けるシーンには度肝を抜かれた。すべてをさらけ出したまま黙々と素振りを続ける姿がなんともシュールなのだが、なんとこのシーン、中村さんは“文字通り”、原作を完全再現していた。
なんでも、撮影する際にいわゆる“前張り”で隠す提案を受けていたそうだが、中村さんは「近藤勲は前張りなんかしない」と拒否。正真正銘、生まれたままの姿で素振りを敢行してしまったのだという。
映画のジャパンプレミアにて、共演している佐藤二朗さんから「(中村さんは)びっくりするくらいずっと裸だった」と明かされ、会場は笑いに包まれた。撮影現場ではだいたいの時間を“素肌にガウンのみ”という出で立ちで過ごしていたというから驚きである。
自身が演じる近藤勲というキャラクターを再現するため、徹底的にリアリティを追及するその役者魂には感服せざるをえない。シリアスとギャグが絶妙に入り混じった、『銀魂』らしさが溢れるエピソードの数々だ。
漫画からの実写化作品では紹介した3選のほか、ほかにも2020年に放送されたドラマ『ホームルーム』で変態教師・愛田凛太郎を演じた山田裕貴さん、Netflix『今際の国のアリス』で最重要キャラクター・キューマを演じた山下智久さんも、一糸まとわぬ姿で登場し、大きな話題を集めた。
演技とはいえ、自身の肉体を披露するとなれば少し躊躇してしまうように思うが、そこを戸惑うことなく演じ切って見せるのが、俳優たるゆえんなのだろう……。俳優たちが身体一つで繰り広げる体当たりの演技に、ぜひ注目してみてほしい。