バトル漫画には、動物をモチーフにしたキャラがよく登場する。例えば、威風堂々とした見た目でプライドが高いライオンキャラや、凶暴な見た目で残虐な戦い方をするサメキャラなど、それぞれの動物のイメージに合った見た目や特徴を持っている。では「牛キャラ」はどうだろう? 実は、牛キャラは見た目の怖さとは裏腹に、どうもイイ奴が多そうなのだ。
そこで今回は有名な「牛キャラ」3人をピックアップし、それぞれの名エピソードを見ていこう。
■『キン肉マン』バッファローマン
まず、漫画家ユニット・ゆでたまご(原作:嶋田隆司氏、作画:中井義則氏)の『キン肉マン』には、アメリカバイソンと闘牛の特徴を持つバッファローマンがいる。
頭に生えた2本の大きな角「ロングホーン」が特徴で、身長250センチ、体重220キロと、肉体自慢の超人レスラーの中でも恵まれた巨体の持ち主だ。
初登場は「7人の悪魔超人編」で、超人オリンピック優勝に浮かれるキン肉マンに対し、挑戦状を叩きつけた「悪魔超人」のリーダー格として現れた。その際、ミート君を首、手足、胴体とバラバラにし、当時の子どもたちを震え上がらせた。
こうしたインパクトのある見た目や初登場とは裏腹に、その後のバッファローマンはかなりイイ奴なところを見せていく。アニメ第65話「タイムリミット1秒前!!の巻/リングは男の友情の巻」では、危機に瀕したミート君を自身のロングホーンを折ってまで救出。悪魔超人でありながら男気のあるところを見せた。
さらには、腕を失ったテリーマンに自らの腕を貸したり、キン肉マンのちぎれた腕の再生のためにロングホーンを提供したりと、バッファローマンのイイ奴エピソードは尽きない。
■『聖闘士星矢』アルデバラン
車田正美氏の『聖闘士星矢』にも、アルデバランという牛キャラが登場する。
アルデバランは、聖域十二宮の第二の宮「金牛宮」を守護する牡牛座(タウラス)の黄金聖闘士である。身長210センチ、体重130キロのごつい体の持ち主で、美形ぞろいの黄金聖闘士の中では珍しくワイルド系の怖い見た目をしている。
彼も見た目は怖いがイイ奴で、アニメ第44話「双児宮!光と闇の迷宮」では、セブンセンシズに目覚め始めた星矢に角を折られるも、その実力を認めて金牛宮の通過を許可している。このときの豪快に笑う姿は、まさに頼れる兄貴のようだった。
また、アルデバランは作中損な役回りをすることが多い。十二宮の順番的に本来1番手のはずのムウに戦う気があまりないため、星矢からはじまりアニメオリジナルのゼータ星ミザールのシド(実際は、ゼータ星アルコルのバドによる背後からの攻撃)、横笛の音色で攻撃するソレント、香気で麻痺させてくる冥闘士のニオベなど、毎回初見殺しのような敵と真っ先に戦う羽目になっているのだ。
さらに久織ちまき氏が作画を務める外伝作品『聖闘士星矢 セインティア翔』に至っては、黄金聖闘士達のほとんどが不在状態となり、十二宮に押し寄せる邪精霊達をアルデバランがほぼ1人で引き受けている。
なんだかんだで損な役回りになりつつ、文句も言わず十二宮を守護し続けているアルデバランはイイ奴に違いないだろう。
■『ドラゴンボール』牛魔王
最後に、鳥山明氏の『ドラゴンボール』に登場する牛魔王を紹介する。チチのお父さん、つまり孫悟空の義理のお父さんである。
初登場はかなり早く、コミック1巻11話「フライパン山の牛魔王」。身長は4メートル強という話もあり、あのピッコロですら2メートル台なので、いかに牛魔王が大きいかわかるだろう。もっさりとたくわえた髭、角付きの兜とマント、手には斧とかなり厳つい姿をしており、自分の財宝を狙う盗人たちを次々と返り討ちにしていた。
それも悟空とチチが結婚する頃には完全に落ち着き、バトルモードの怖い見た目から、白いワイシャツにサスペンダーの付いたハーフパンツと、現代風のオジファッションになっていた。
牛魔王のイイ奴エピソードとして印象的なのが、アニメが『Z』に移行する直前にあたる第149話から第153話。ここでは牛魔王が暮らすフライパン山が再び燃え上がるという、アニメオリジナルの展開がある。悟空と娘のチチはその消火方法を求めて世界中を飛び回るが、その一方、牛魔王は燃え上がるフライパン山で一人、亡き妻の形見でもあるチチの花嫁衣装を炎から必死に守っていた。
妻に先立たれ、シングルファーザーとして育てた一人娘の結婚式直前……。父親最後の仕事を果たそうとする、イイ奴以上の素晴らしい父としての牛魔王の姿が、そこにはあった。
今回は、バトル漫画に登場する「牛キャラ」たちの名エピソードをもとに、見た目は怖い彼らがいかにイイ奴なのかを紹介してきた。
いずれのキャラも初登場時こそ、その巨体と怖い見た目で周囲を圧倒していた。しかしストーリーが進むにつれ、本来持つ情に厚い面や責任感が目立ちはじめ、最終的には完全にイイ奴になっている。「牛キャラ」は見た目は怖いものの、たしかにイイ奴が多かったようだ。