『花とゆめ』『LaLa』『ベツコミ』明るい表情の裏側で…名作少女漫画の爽やかイケメンなのに「実は闇が深い」キャラの画像
フラワーコミックス『僕らがいた』14巻(小学館)
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 2023年4月からTOKYOMXほかにて放送されていたアニメ『スキップとローファー』。アニメ放送を機に話題となり、早くも2期を期待する声が多く聞こえている。

 原作は、現在『月刊アフタヌーン』(講談社)にて連載中の青春漫画。田舎出身の主人公が東京の高偏差値高校へ進学したところから物語が始まる。主人公の岩倉美津未は人生設計だけは完璧だが、天然でどこか周囲から浮いている性格。そんな美津未が入学式の日に同級生の志摩聡介と出会ったことで、学校生活が少しずつ動き出すというあらすじだ。

 志摩はクラスの女子から注目されるイケメンで、柔らかな人柄が魅力的な人物。しかし彼には普段人には見せない影の部分があり、アニメ最終話ではその一部分にも触れられた。

『スキップとローファー』の志摩のように、普段は人当たりが良くさわやかな人気者なのに、実は闇を抱えているイケメンの漫画キャラは意外に多い。今回は、女の子の憧れる少女漫画に絞って、「闇深イケメン」を紹介したい。

 まずは、『LaLa』(白泉社)にて連載されていた津田雅美氏による『彼氏彼女の事情』の有馬総一郎。1998年には庵野秀明監督によりアニメ化された作品だ。

 有馬は主人公の宮沢雪野のクラスメイトで、美形で運動神経に優れており性格も人当たりもよい、本物の優等生。雪野が他人に賞賛されたいがために努力を重ねてきた「見栄王」であるのに対し、有馬にはそういった下心のようなものがいっさいない。雪野はそんな有馬の姿に心から悔しがってきた。

 物語の序盤ではあることをきっかけに雪野の本性が有馬にバレ、そこから少しずつ2人は本音で話していくようになり、結果友達も増えていくこととなる。青春の人間関係や夢、悩みなどが繊細に描かれる群像劇のような物語は多くの読者の胸を打った。

 しかし物語が進んでいくうち、有馬の完璧さの裏にある、過去の家庭でのつらい経験が明らかになる。それは、養父母のもとで暮らす有馬が幼児期に実母から受けた虐待によって心的外傷を抱え、心に孤独を抱えていたということだ。このことが原因で有馬は雪野に見放されることを恐れ、ひとり苦悩を重ねていく。

 彼の抱える家族関係の闇は自分だけでどうにかなるものではなく、その裏には親世代の複雑な家庭環境も関係していた。同作は長期連載で、有馬が闇から解放されたシーンと壮大な物語の完結が読者に大きな感動を与えた。

 続いては、『花とゆめ』(白泉社)にて連載されていた高屋奈月氏による『フルーツバスケット』。

 十二支の呪いがかかり、異性に抱きつかれたり身体が弱ったりすることで憑かれた動物に変身するという特殊な体質を持つ草摩家の一族と、主人公の本田透を中心とした物語。十二支憑きに由来したさまざまなコンプレックスと向き合うキャラクターの姿が高い評価を集めた作品だ。

 中でも物語の序盤から登場し、学校にはファンクラブもある眉目秀麗、成績優秀、文武両道の草摩由希は王子様的な存在だ。穏やかな性格で透も尊敬する由希だが、完璧さの裏には、草摩慊人によって精神的なダメージを負わされ、また同時期に唯一の友人を失くしたことがトラウマで、自身に深く立ち入られることを恐れているという一面があった。

 そんな彼を決定的に変えたのは、生徒会での活動だろう。当初は透とくっつくのでは? と思った読者も多そうだが、透への気持ちが「母性愛」だと気づいた由希は、意外な人物と交流を重ねつき合うことになる。彼が自分自身で選んだ人生を応援せずにはいられない。

『ベツコミ』(小学館)で連載された小畑友紀氏による『僕等がいた』の矢野元晴も意外な一面を持っていたキャラのひとり。

 矢野は、「女子の3分の2が必ず恋に落ちる」と言われている、明るくノリの良いクラスの人気者。物語の序盤では主人公の高橋七美との、いかにも「こんな恋愛してみたい」と思わせる少女漫画の王道のようなやりとりが多いのだが、矢野には恋人との死別という悲しい過去があり、ずっと心を閉ざしていた。

 矢野の闇はこれだけではない。高校2年生のときに精神が不安定な母親と東京に引っ越してからは七美と遠距離恋愛になるものの突然音信不通となり、行方をくらませてしまう。七美は社会人になった後ようやく矢野と再会したものの、その姿は別人のように変わってしまっていた。しかも、矢野は亡くなった元彼女の妹と同棲しており、肉体関係を持っていることまで明らかにされた。

 いくら重い過去を背負い、自身もパニック障害に苛まれているとはいえ、主人公の七美の気持ちを思うとあまりにやりきれない鬱展開の多さには衝撃を受けたものだ。最後までこの漫画がどういう結末を迎えるのか想像ができず、胸を締め付けられながらページを読み進めていた読者は多いと思う。

 主人公が憧れるさわやかイケメンであるにも関わらず、実は闇が深すぎるイケメンキャラたち。背負ったものの多さには読者もギョッとしてしまう。一方で『君に届け』の風早翔太のように、根っからのさわやか好青年キャラもいるが、漫画においてはむしろそちらの方が希少かも?

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