1981年に映画『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』が公開され、『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』(1984年)、『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(1989年)と日本でも大ヒットを記録しましたが、古代文明や各地に残る伝説・伝承を扱った、夢やロマンに満ちた時代や世界をモチーフにしたゲームは少なくありません。現在にも残る遺物、そしてイメージを掻き立てられる逸話。80年代中期の子どもたちをワクワクさせた「古代文明」「伝説」を扱った名作ファミコンソフトを紹介したいと思います。
■ソロモンの書を開いた結果は…? 傑作パズルアクション『ソロモンの鍵』
最初に紹介するのは今でも傑作として語られるアクションパズルゲームのひとつ『ソロモンの鍵』(テクモ/1986年)。
歴史上のソロモンは、神から知恵を授かり多くの悪魔を使役したといわれる古代イスラエルの王で、カバラの秘儀が記された「ラジエルの書」を授けられたともいわれています。その伝承を引用したのか、ゲームのストーリーは、ある道士が「ソロモンの書」を発見したことで封印されていた悪霊が解放されてしまい、それを再び封印するために魔法使いのダーナが星座宮へ挑むというものになっています。
ゲームは全50ステージのアクションパズルゲーム。ダーナは石を作ったり消したりする「換石の術」と、モンスターを攻撃する「火球の術」という2つの魔法を使いステージをクリアを目指します。換石の術で作った石で足場を作るのはもちろん、敵の動きを誘導したり攻撃を防いだりできる応用性の高さは本作の醍醐味であり、これが傑作と呼ばれる要因のひとつ。防護の呪文や天使学、黄道十二星座の魔術的運用が記されているという魔術書「ラジエルの書」、黄道十二星座をモチーフにしたステージ、六芒星が描かれた「ソロモンの封印」や「ソロモンの鍵」といったアイテムが登場する『ソロモンの鍵』は、ソロモンの伝承の要素がふんだんに取り入れられたゲームといってもいいのではないでしょうか。
■バベルの塔と空中庭園という2つが悪魔合体した『バベルの塔』
続いては旧約聖書に記されていて、それがそのままゲーム名にもなっているアクションパズル『バベルの塔』(ナムコ/1986年)です。
本作のストーリーは、神々が地上に降臨するための階段として古代バビロニアの人々が建てたバベルの塔が時空を超えて蘇り、その頂上にはバビロンの空中庭園が存在する……というもの。旧約聖書のバベルの塔の逸話とはまるで違いますが、新バビロニア帝国時代に建設されバベルの塔の挿絵に影響を与えたともいわれているエ・テメン・アン・キのジッグラトと、同時代に建築されたという世界の七不思議のひとつ「バビロンの空中庭園」の伝説がミックスされたのがゲームの『バベルの塔』の世界観のようです。
『バベルの塔』は、主人公である考古学者・インディーを操作し、塔内のL字型の石を組み合わせて出口へと向かうアクションパズル。
石を持ち上げたり置き換えたり、積み重ねたりしてパズルのようなステージを攻略していくのですが、石を持ち上げるたびにインディーのパワーが減るという制限があります。アイテムでパワーを回復させることも可能ですが、限られたパワーで石をどのように使えば出口までの道を作れるのかが本作のポイント。クリアに必要なものはそのステージにすべて揃っており、それらをいかに組み合わせるか、頭を働かせる面白さはいまでも色褪せておらず、またちょっと癖になる軽快なサウンドも本作の魅力です。全64ステージに加え、同数ステージの「裏バベル」もあり大ボリュームかつ歯応え満点の一作です。
■アトランチス? アトランティス? 浮上した大陸を冒険する『アトランチスの謎』
古代ギリシアの哲学者プラトンの著書「ティマイオス」「クリティアス」に記述されている、大西洋に存在したといわれる伝説の大陸アトランティス。海中に没したと伝えられていたアトランティス大陸が現代に浮上し、半人前の冒険家ウィンがアトランティスへ向かうのが『アトランチスの謎』(サンソフト/1986年)です。
本作ではタイトルを含めて「アトランチス」と呼ばれていますが、説明書には「海峡の西方にあったが神罰によって、一日一夜のうちに海底に沈没したといわれる伝説上の楽土」とあり、間違いなくアトランティスがモチーフのゲームといえるでしょう。
ゲーム内容は小型爆弾「ボン」とジャンプを駆使して全100ゾーンを攻略する横スクロールアクション。ゾーンは緑のある大陸表面や洞窟、氷で足元がすべったり真っ暗だったりと様々で、遺跡を感じさせるゾーンもあります。それらゾーンの扉をくぐることで別のゾーンに移動できるのですが、隠されている扉に入ると一気に先のゾーンまでワープできたり、不思議な力を持つ“ミステリーアイテム”があるゾーンに繋がっていたりします。なかには特別なアイテムがないと通れないゾーンもあったり、ボンで自滅したかと思ったら先のゾーンにワープしてたりなど、数々の謎を解き明かしながら進んでいくのはまさに冒険を体現したゲームといっていいでしょう。
■古代文明のデパート!? あらゆる時代の文明を巡っていた『ヘクター’87』
ラストはなんとシューティングキャラバン認定ソフトである『ヘクター’87』(ハドソン/1987年)。
本作のストーリーは、星歴1024年に起きた第三次世界大戦で失われた人類の遺産を求め、太古の地球へ旅立った調査船団がバイオメカに襲撃され、それと戦うというもの。ここで調査船団が向かったのがインカ帝国やマヤ帝国、アトランティスにムー大陸、さらにはエジプトや邪馬台国といった古代文明が栄えた時代で、同時にそれらがゲームのステージなのです。
ゲームとしてはステージごとに縦スクロールと横スクロールが交互に変化するシューティングゲーム。ライフ制と残機制の両方を採用しているにもかかわらずかなりの高難度。自機が調査船だからなのかパワーアップもなく爽快感に欠けるシビアなシステムは、賛否両論あるところだと思います。正直なところ出現する敵が古代文明とはあんまり関係ないデザインなのでは? と思ったりもしますが、ボスはそれっぽいのもいるため、ギリギリ古代文明をモチーフにしたゲームなのかな、という印象です。
■元ネタを知って遊べば、ゲームへの理解と面白さが何倍にもアップ!
こういった元ネタがモチーフになったゲームは多々ありますが、そのネタを調べてみると意外な面白さや未知を知る楽しさを体感できたりするものです。ましてや、それらがシステムやシナリオにうまい具合に組み込まれていることに気がついたときは、それこそパズルを解いたかのような達成感が得られることも。
今回紹介した『ソロモンの鍵』『バベルの塔』『アトランチスの謎』は、その元ネタの面白さや奥深さはなかなかのものなので、調べてみると結構面白いと思いますよ。そして、これらのタイトルはNintendo Switch Onlineで配信されているので、ぜひ一度プレイしてみてください。