『ファミコンロッキー』や『ファミ拳リュウ』も…その面白さに誰もが熱狂! 1980年代に猛威を振るった「ファミコン」を題材にした漫画たちの画像
てんとう虫コミックス『ファミコンロッキー』(小学館)第1巻

 1983年に任天堂より発売された『ファミリーコンピュータ』は、その凄まじい人気から空前のテレビゲームブームを巻き起こした。これを受け、1980年代には「ファミコン」を題材にした数々の漫画も連載を開始している。猛威を振るったファミコン人気によって生まれた、数々の漫画作品たちについて見ていこう。

■鍛えた“連打”で猛者に打ち勝て…『ファミコンロッキー』

 1985年から『月刊コロコロコミック』(小学館)にて連載された、あさいもとゆき氏の『ファミコンロッキー』は、拳法道場の息子である主人公・轟勇気が、卓越した身体能力や技術を活かし、破天荒な攻略法を武器にさまざまなゲームに立ち向かっていくという話だ。

 本作の最大の特徴といえば、やはり“拳法”と“ゲーム”を融合させた、型破りなストーリー展開だろう。勇気は反射神経を最大の武器に、作中でもさまざまな必殺技を披露していく。

 彼が得意とする「ゲーム拳」は、ボタンの“連打”を活用した技が多い。1秒間にボタンを50回連打する「五十連打」を基本技として、連打を極めることで腕が何本にも増えて見える「阿修羅乱れ打ち」や、シューティングゲームで全方位に弾を連射して弾幕を作る「回転撃ち」など、数々のバリエーションが存在する。

 その連打力は徐々に進化を遂げ、果ては画面上の自機を回転させて竜巻を起こす「十字キー四方乱れ打ち」や、連打によって生まれた衝撃波で限界を超えた連打数をたたき出す「超速衝撃連打(スーパーインパルスアタック)」など、人間離れした技が飛び出すのは、少年漫画らしい展開といえるだろう。

 また、ゲームにまつわる数々の「裏技」も登場するのだが、これは漫画オリジナルなものがほとんどで、そのハチャメチャぶりもまた本作の魅力の一つとなっている。

 作中に登場するゲームタイトルはいずれも実際に世に放たれたものばかりで、ファミコンブームの波に見事に乗り、本作も空前のヒットとなった。

 ちなみに「連打」……という言葉を聞くとプロゲーマー・高橋名人を思い浮かべる人も多いかもしれないが、実は本作のほうがわずかにデビューが早かったりもする。人間離れした数々の超人技と度肝を抜かれる裏技の数々、そして実在するゲームのコラボレーションがなんとも面白い一作だ。

■シリアスタッチで描かれた悪の組織との激闘…『ファミ拳リュウ』

 1985年より『コミックボンボン』(講談社)にて連載された、ほしの竜一氏の『ファミ拳リュウ』は、主人公・大神竜が身につけたカンフーの技を駆使し、ゲームを攻略することで敵対組織と戦っていくストーリーだ。

「ファミコン」をテーマにしているが、展開はバトル漫画に近く、竜が操る「ファミ拳」という拳法はもちろん、怪しげなファミコンスクールが運営されていたり、敵組織のハッカー軍団が登場したりと、ファミコンというキーワードを題材にしたハチャメチャな世界観が繰り広げられる。

 また、敵キャラたちも実に破天荒極まりない。生まれ持った強い生物電気でバグを発生させる少年や、バイオテクノロジーによって蜘蛛と一体化した魔道人類など、特殊能力や異なる種族も登場した。

 しかし、型破りに見える世界観でありながらそのストーリー構成や演出は実に秀逸で、後半になればなるほど、どこかダークな世界観が読者を惹きこみ、魅了した。

 敵組織も目的のためならば手段を選ばない徹底した“悪”として描かれており、竜のクローンを生み出したりと徐々に展開がシリアスな方向へ進んでいく。

 子ども向けに見えて実に骨太な戦いが描かれていく本作だが、現在では単行本が絶版となっており、さらに物語終盤が未収録になっているのも残念な点である。

 どちらにせよ、当時のファミコンブームを見事に捉えつつ、カンフー少年と邪悪な組織の激闘を描き切り観る者を強烈に惹きこんだ“幻の一作”といえるだろう。

■「ファミコンゲーム」の裏側も描いたマニアックな魅力が人気に…『ファミコン風雲児』

 ファミコンブームのなかで生まれた漫画作品といえば、これまで紹介したもののようにゲームを介して誰かと競い合いバトルを繰り広げていくものが多かったが、なかには一風違った角度から「ファミコン」を取り上げた作品も登場している。

 1985年から『コミックボンボン』(講談社)で連載された、池原しげと氏の『ファミコン風雲児』も、主人公の少年たちが世界征服を企む悪の組織とゲームを通じて戦う……と、少年漫画としての大筋は変わらない。

 しかし、本作の最大の特徴は、随所に登場する本格的な“情報技術”についての描写の数々だろう。

 主人公・天竜研がプログラマーを目指す少年ということにも起因するが、作中ではゲームを作り上げるさまざまな概念が詳細に描かれており、ゲームを構成するプログラムについてはもちろん、プログラム改造の話や、アスキー符号などといった、専門分野の人間でなければぴんとこないようなマニアックな技術的な話も登場する。

 また、いずれ来るであろう情報社会を暗示しているような描写もあり、“ワイヤレスコントローラー”、“携帯型ファミコン”といった数々の要素は、まさに現在、我々の生きる未来をずばり言い当てていてびっくりしてしまう。

 少し専門的な作品にも見えるが、それでいて少年漫画としての基本はしっかりと押さえられており、ゲームの魅力と主人公たちの奮闘が見事にミックスされている。

 残念ながらこちらの作品も現在では単行本が絶版となっており、入手は非常に困難。前述の『ファミ拳リュウ』とコラボした経歴もあり、まさに1980年代を代表するファミコン漫画の一つだといえるだろう。

 

「ファミコン」を題材にした漫画と一口に言っても、その作風や表現法が実に多種多様なのは面白い点だ。拳法と組み合わせた超人技で、悪の組織との戦いで、これから来る情報社会を先読みして……どの作品もそれぞれの手法で、見事にファミコンの魅力を引き出している。

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