『デビルマン』大魔神サタンに『ジョジョ』山岸由花子も…少年漫画に登場した時代を先取りした「ヤンデレキャラ」3選の画像
画業50周年愛蔵版『デビルマン』第1巻(小学館・ビッグコミックススペシャル)

 漫画やアニメに登場するヤンデレキャラは、献身的で愛情深い一面があるが、同時に異常なまでの嫉妬心も併せ持つ。愛情が過剰になりすぎて、意中の人を狙う第三者を過激な手段で排除したり、愛する人へのストーカー行為に及んだりする場合も……。

 そこで今回は「ヤンデレ」という言葉が生まれる前に誕生した、魅力的で危険性を併せ持つヤンデレキャラを紹介していこう。

■人間に恋をした悪魔…『デビルマン』大魔神サタン

 まず最初に紹介するのは、永井豪氏の『デビルマン』に登場する大魔神サタンだ。サタンははるか昔、人類よりも前に地球を支配していたデーモン族のトップである。サタンはデーモン族を率い神との戦いのあと、200万年もの深い眠りについた。しかし、目覚めたときには人類が地球を支配して蝕んでいたため、滅ぼそうとするのだ。

 サタンは人間の弱点を探り当てようと、主人公・不動明の同級生である飛鳥了に化けて人間社会に潜伏する。しかし、明と行動をともにするうちに彼に恋をしてしまう。

 作中では、デーモンが人類を滅ぼしたあとでも生きていけるように明をデビルマン(人間とデーモンの融合体)にさせたと飛鳥了は語っている。最終的にサタンはデーモン族を率いて、明が率いるデビルマン軍団との最終戦争をすることになる。そして、戦いで半身を失った明を抱きながら、謝罪の涙を流し物語はエンディングを迎えるのだ。

 サタンが抱える人類への激しい憎しみと、それでも明だけは生き残って欲しいという愛情とのヤンデレ具合……これも本作の見どころであった。これも『デビルマン』が後世まで語り継がれることになった要素の一つではないだろうか。

■愛するがゆえに監禁!? 『ジョジョの奇妙な冒険』山岸由花子

 次に紹介するのは、荒木飛呂彦氏の『ジョジョの奇妙な冒険』第4部『ダイヤモンドは砕けない』に登場する女子高生・山岸由花子だ。

 ウェーブのかかった長い黒髪が特徴的な由花子はクールな見た目をしているが、非常に思い込みが激しく、自分の思い通りにならないとキレるという恐ろしい一面を持っている。

 作中、由花子はぶどうヶ丘高校の同級生・広瀬康一に恋心を抱く。カフェに呼び出し一方的に愛や思いを告白するのだが、康一がはっきりと返事をしないことに業を煮やし、テーブルを激しく叩きながら「愛しているの!? 愛していないの!? さっさと答えてよっ!」と豹変……。ほかにも、彼に近づく女性に「ちょっとあなた、康一くんにちょっかい出すのやめてくれませんか?」など、牽制する姿も見せている。

 さらに、主人公・東方仗助たちが康一を助けようとして彼がいかに酷い人間であるか噂を流すも、逆に教育して自分が立派な男に育て上げると決意し、康一を拉致監禁する始末。

 最終的に自分の愛を受け入れない康一にブチ切れ、「あたしのことを愛するようになるまでこの家を出さないわ」「絶対に! 愛させてみせる!」と言い、襲いかかるのだ。戦闘では康一のスタンドに敗れたものの、それでも彼を愛し続けると決心していた由花子。

 ヤンデレが過ぎて過激な行動を取ることもあるが、こんな美人に一途に愛情を傾けてもらえるのは、少し羨ましいかもしれない……?

■男のヤンデレストーカー…? 『封神演義』劉環

 最後に紹介するのは、藤崎竜氏の『封神演義』に登場する劉環だ。主人公・太公望たちに立ちはだかった金鰲島の仙人・趙公明の部下である。

 背が低くボサボサ髪で不細工……と、風貌的に残念な道士・土行孫になぜか一目惚れして太公望側に寝返った“美少女スパイ(自称)”の鄧蝉玉と金鰲島で顔なじみになり、彼女をストーキングすることに。

 鄧蝉玉が土行孫にデレデレしているのは、“自分の気を引くためにわざとやっている”と思い込んでおり、再び仲間になるよう説得するも攻撃される。それでもなお「どうして素直になれないのかなあ?」と、痛々しいほど勘違いぶりを発揮していた。

 さらに、“おしおき”をするため、火の宝貝で鄧蝉玉を圧倒。負けそうになった鄧蝉玉は最後の力を振り絞って人質となっていた土行孫を助けるのだが、それにブチギレた劉環は鄧蝉玉を手に入れられないと察し、それならばいっそ……と、殺そうとするのだ。

 最終的に仙女・竜吉公主により重傷を負ってしまった劉環。鄧蝉玉と無理心中をしようとするも、土行孫の攻撃により絶命してしまった。

 劉環の師匠・趙公明も強烈な個性と価値観を持っているので、もっとまともな師匠に出会えていれば、ヤンデレストーカーにはならなかったのではと感じてしまう。

 

 ヤンデレキャラが恐ろしいと感じる以上に魅力的に映るのは、その強烈すぎる行動やセリフが良くも悪くも印象的だからこそ。

 今回紹介したキャラクターは、「ヤンデレ」という言葉が生まれる前から存在している。さらに言えば、古典作品や神話にもヤンデレは登場しており、いずれにせよ彼らはこれからも人々を魅了し続ける存在なのだろう。

  1. 1
  2. 2