『ガラスの仮面』は、美内すずえ氏による演劇を舞台にした名作漫画だ。演劇の天才少女である北島マヤが、数々の試練を乗り越え演劇の世界で頂点を目指す物語である。
そんな『ガラスの仮面』には、マヤのライバルが多く登場する。その多くが容姿端麗で演技力に長けているのだが、天才マヤの何気ないひと言や演技力に驚き、挫折してしまうことも多い。今回は主人公のマヤの演技に圧倒され、傷ついていくキャラを4人紹介する。
■役に成りきる姿に驚愕…ベス役を争った「水無月さやか」
水無月さやかは、花とゆめコミック2巻に登場する、マヤと同じ劇団つきかげのメンバーだ。劇団つきかげに所属したマヤは、発表会で演じる「若草物語」のベス役候補となる。しかしベス役はさやかも狙っており、2人のライバル関係が展開されることに。
ベス役オーディションの演技は「ただ椅子にじっと座っているだけ」であった。さやかは静かに座り続けるだけで、何をしたらいいか分からない。その一方、マヤはベスになりきり、大きなあくびをし、空想のもと編み物を続ける。
さやかは、もはや“演じる”のではなくベスに“なりきった”マヤを見て驚愕し、敗北を認めるのであった。このシーンでは、マヤがいかに演劇に対し高い情熱を持ち、自我を忘れるほどの天才少女であるかが分かるシーンだ。
■マヤのライバルによって絶望感を味わった「乙部のりえ」
乙部のりえは、登場時は見た目が地味な田舎の少女。マヤの優しい付き人のような存在であったが、実はマヤを陥れて自分がその役を奪うのが目的の女優だった。実際、汚い手でマヤを陥れることに成功したのりえは、彼女そっくりの演技で舞台を成功させる。
しかしそれに激怒したのが、マヤの最大のライバルである「姫川亜弓」である。のりえが主役の舞台「カーミラの肖像」に乗り込んだ亜弓は完全に主役を食う演技をし、のりえは女優として最大の屈辱を味わう。
絶望の淵でのりえが思い出したのは、亜弓の最大のライバルがマヤだということだった。亜弓に屈服したのりえは、そもそも自分はマヤの足元にも及ばない存在だったことに気づき、膝から崩れ落ちるのであった。
のりえの場合は、直接マヤの行動に挫折感を味わったものではない。しかし、完全な敗北を実感するのが印象的だ。
それ以降、のりえは作中では描かれていないが、彼女の“その後”は美内氏の公式サイトの質問コーナーにて記されている。それによると、事務所を替えて雑誌モデルをやったもののうまくいかず、現在はアルバイトをしながらニューヨークのダンススタジオに通っていると明かしていた。
■歌劇団スターもマヤの演技にはかなわない!「円城寺まどか」
円城寺まどかは花とゆめコミック31巻に登場するスター女優だ。ミュージカル「イサドラ!」の主演女優として話題性を奪い、マヤの存在を消す立場にあった。
しかし舞台初日のパーティーで、まどかはマヤによってその存在感を失うことになる。マヤは一度見ただけのイサドラのセリフを完コピし、それをその場で披露して周りを驚かせるのだ。
さらに、マヤを想う速水真澄の計らいにより、次回の舞台「忘れられた荒野」で主演を務める狼少女ジェーンをその場で演じるマヤ。その高い演技力によって、マスコミの注目は一気にマヤに集まる。
主演舞台のパーティーなのに、速水の策略によってマヤ中心の舞台にさせられてしまうのはちょっと気の毒だったが……しかしまどか自身もマヤの演技を見て「今あの子が狼にみえた…」と震え、彼女の実力におののいていた。
■マヤの演技を見るたびに闘志を燃やす最大のライバル“姫川亜弓”
最後に、マヤの最大のライバル姫川亜弓を紹介したい。彼女はマヤと正反対の容姿端麗、華麗なる芸能人一家の娘として生まれ、すべての演技において華がある。
しかしマヤの恐ろしい才能を目の当たりにすると、心穏やかではいられない。たとえば「忘れられた荒野」の舞台を見た亜弓は「わたしはただの一度もあなたに勝ったと思ったことはないわ」と、怒りや嫉妬心で胸を熱くしている。
マヤの演技を見るたびに“負けられない…!”と、白目蒼白になるのが印象的な亜弓。しかし肝心のマヤは自分がライバル視されているとは気づいておらず、亜弓に対しいつも尊敬のまなざしを向ける。天然ともいえるマヤの言動に、亜弓の心がざわついてしまうのも無理はないだろう。
マヤは演劇の世界に入ると没頭してしまい、場を読めない発言をしてしまうこともしばしば。しかしその類まれなる天才的な演技力を目の当たりにしたライバルたちは打ちのめされ、自分の演技に自信を失ってしまうのだ。
ちなみに『ガラスの仮面』は連載から45年以上が経過してもまだ完結しておらず、現在は作品の山場といえる舞台「紅天女」のストーリーが展開されている。マヤと亜弓のどちらが紅天女になるのか、そしてマヤと速水真澄との恋愛関係はどうなるのかにも注目だ。