黄金聖闘士がカッコよすぎ!『聖闘士星矢』効果で子どもたちの自慢にもなった十二星座とは?の画像
アニメ『聖闘士星矢 Blu-ray BOX』第1巻より
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 ジャンプ黄金期の1985年より連載となった漫画『聖闘士星矢』は、車田正美さんの代表作だ。ギリシア神話をモチーフに、星座の名を冠する聖衣(クロス)をまとった聖闘士(セイント)たちが女神アテナを守護しながら悪と戦う物語。本作は熱血少年バトル漫画でありながら、星座にまつわる逸話、神話に登場する武器・英雄など当時は目新しかったファンタジー要素が散りばめられ、さらに多数の美形キャラが登場したことで男性のみならず女性ファンも獲得した。

 なかでも、本作一番の盛り上がりと人気を誇ったのが、「黄道十二星座」をモチーフとした黄金聖闘士(ゴールドセイント)。彼らは88ある聖闘士の頂点に立つと同時に、アテナ神殿へと続く唯一の通路「十二宮」を守護する最強の存在だ。

 黄金聖闘士の活躍によって、それまでまるで興味がなかった12星座を覚えたという男子読者も多かったはず。ただ、物語が進むにつれてそれぞれの星座のキャラの活躍度合いも異なるため、なんとなく自分の星座が誇らしかったり逆に嬉しくなかったり……など一喜一憂する事態もあったのではないだろうか。今回は今なお人気の高い『聖闘士星矢』を振り返り、黄金聖闘士と12星座の思い出を語りたいと思う。

■逆賊の弟、洗脳、わからず屋、派生作の活躍などで人気の獅子座

 ライオン(獅子)は強い動物として男の子に人気だが、その名を冠する黄金聖闘士が「獅子座(レオ)のアイオリア」だ。

 第1話から登場している最古参のひとりで、男らしい風貌と偏見のない考え方などが読者に好印象を与えたキャラ。必殺技は電撃型の「ライトニングボルト」、それを広範囲で素早く撃ち出す「ライトニングプラズマ」などがあり、後者は獅子の爪のような軌跡を描くことなどから黄金の獅子とも称されている。

 そんな彼は、亡き兄「射手座(サジタリアス)のアイオロス」がアテナ殺害の汚名を着せられたことで、“逆賊の弟”として長年辛酸をなめ続けた苦労人。そのためか真実を受け入れられず星矢から「わからず屋!」と呼ばれ、教皇の元に単独で訪れ洗脳されたりなど失態もちらほらとあった。とはいえ、後に外伝漫画『EPISODE.G』や2015年配信のスピンオフアニメ『黄金魂 -soul of gold-』で主役を務めるなど屈指の人気キャラでもある。獅子座生まれの子どもたちの多くは、一本気で熱血漢なアイオリアを好きだったのではないだろうか。

■最強の肩書に乙女座生まれの男子も歓喜

 一部の“乙女座”男子のコンプレックスを打ち砕いたのが、長い金髪と額のチャクラ、目を閉じた姿が印象的な美形キャラ「乙女座(バルゴ)のシャカ」だ。

「もっとも神に近い男」などの異名を持つ彼は、視覚を遮断することで小宇宙(コスモ)を蓄積し、開眼した際に強力な技を解放させる。必殺技は天魔降伏などどんな技か分かりづらいものから、オームといった音や字面が面白いもの、六道輪廻や天舞宝輪のような凶悪技まで多種多様。

 圧倒的な強さを誇る彼は、初登場時からジャンプ本誌で表紙を飾り、同号では特別読切『SHAKA』まで掲載。その後、守護する処女宮での戦いは全ページフルカラーで掲載されるなど、特別なキャラクターでもあった。

■トラウマを植え付けた蟹座ショック

 逆に、その星座生まれの子どもたちを“黄泉比良坂”へと叩き落としたのが、「蟹座(キャンサー)のデスマスク」だ。初登場となる中国・五老峰では黄金聖闘士らしく紫龍を圧倒するも、「牡羊座(アリエス)のムウ」の介入により老師暗殺を断念。撤退する姿はそれなりにカッコ良かった。

 ところが、巨蟹宮で紫龍との再戦が始まると、黄金聖闘士としての威厳や余裕が徐々に消えてしまう。彼が殺した死者には罪なき子どもたちも含まれ、紫龍の無事を願う春麗の祈りにイラつき滝つぼに落とすなど、まさに非道な人物。これらの行為が後にしっぺ返しとなり、亡者に反撃され、蟹座の聖衣に見限られてしまうなど散々だ。さらに、当時流行ったのりピー語を駆使し、紫龍の逆鱗に触れた際に「あじゃぱアーッ!!」と奇天烈な叫び声を上げるなど、蟹座読者のメンタルを徹底的にエグり続けた。

 また、デスマスクとは水棲生物繋がりな「魚座(ピスケス)のアフロディーテ」も、魚座生まれを最後の最後で涙目にした人物だ。とはいえ、派生作品でのデスマスクやアフロディーテの活躍、『聖闘士星矢 NEXT DIMENSION 冥王神話』で登場する蟹座のデストールなどにより、蟹座と魚座の地位が向上したのは間違いないだろう。

■意外!天秤座や水瓶座がカッコイイ存在に

 自分の星座が天秤座や水瓶座と知っても、無機物にどう感情移入をしたらよいのか微妙かもしれない。そんな星座を「しぶい!」「カッコいい!」と高めてくれたのが、「天秤座(ライブラ)の童虎」と「水瓶座(アクエリアス)のカミュ」だ。

 童虎は前聖戦の生き残りで、紫龍の師である「老師」の真の姿である。十二宮編では聖衣のみの活躍だったが、童虎への脱皮時は遅まきながら天秤座生まれを喜ばせた。

 一方、アニメと原作の設定の違いで、いろいろとゴタついたカミュもその動向にやきもきさせられた黄金聖闘士だ。氷河の母親が眠る船を海溝に落とし、仮死状態にしたのも全ては弟子を思うがゆえ。命を賭して絶対零度へと導く彼の姿には、水瓶座生まれのみならず多くのファンが涙したに違いない。

 他にも、「蠍座のミロ」は圧倒的な強さを誇るうえ、情にあつい言動で人気となり蠍座生まれが胸をなでおろしている。後に筆者はアニメ声優が池田秀一さんと知り、スカーレットニードル=「赤い」繋がりなのだと勝手に納得をしたものだ。

 また、二重人格イメージがつけられた「双子座(ジェミニ)のサガ」、紫龍を救い聖剣(エクスカリバー)を託した「山羊座(カプリコーン)のシュラ」、最強とされながらもなかなか実力を見せなかった「牡羊座(アリエス)のムウ」、好人物ながらあまり活躍が望めなかった「牡牛座(タウラス)のアルデバラン」、すでに故人のため回想や思念でしか出番のなかった「射手座のアイオロス」など、それぞれ活躍の度合いは違うものの、名キャラばかりだった黄金聖闘士たち。

 当時の読者は同じ星座の黄金聖闘士を通して物語を楽しんでいたのかもしれない。

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