かつては映画館でよく企画されていた、複数作品の同時上映。それほど興味のない作品を“ついで”に見ることができ、それをきっかけにハマってしまう……そんなこともよくあった。目当ての映画が終わったら途中退席する派としない派、何回も見る派が分かれるなど、面白い体験ができたものである。
しかしなかには組み合わせが極端すぎて、2つの映画の内容の親和性が謎のものも存在していた。そこで、なぜこれを組み合わせた……!?となる、謎な同時上映の組み合わせを3つピックアップしてみた。
■異色すぎるコラボマスコットも実現…『ゴジラ』と『ハム太郎』
まずは、2001年に公開された怪獣映画『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』と『劇場版 とっとこハム太郎 ハムハムランド大冒険』の組み合わせである。
巨大怪獣の代名詞である「ゴジラ」と、小動物のハムスターをさらに可愛くデフォルメした「ハム太郎」の同時上映ということを聞けば、それだけでなんとなくカオスな雰囲気を感じとれるだろう。
しかも『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』に登場するのは、歴代でもビジュアルが最恐と言われている、“白目のゴジラ”なのである。黒目があると、どことなく人間味が感じられて柔らかい雰囲気となるが、本作のゴジラは白目だけで、なんだか無感情に見える。不気味な感じも合わさって、迫力と怪物感はハンパなかった。
一方、『劇場版 とっとこハム太郎 ハムハムランド大冒険』は、内容的にはオーソドックスな冒険ものなのだが、なんと本作が劇場版1作目だった。初劇場版で『ゴジラ』を噛ませるのは、なかなかのチャレンジャーであろう……。
さらに、ハム太郎の映画では、つんく♂さんがプロデュースしたアイドルグループ「ミニモニ。」をモチーフとした「ミニハムず」とのコラボも展開。『ゴジラ』と『ハム太郎』と「ミニハムず」の要素が混じり合い、カオス具合がさらに増すこととなった。
公式も異色のコラボだと認識していたのか、「ゴジハムくん」というコラボマスコットフィギュアも誕生した。ハム太郎がゴジラの着ぐるみを着ているのか、はたまた、ゴジラの口の中にハム太郎がいるのかは分からないが、ゴジラのゴツゴツした肌の中につぶらで大きな瞳のハム太郎が顔を出している、なんともシュールなデザインなのである。
ゴジラ、もしくはハム太郎を目当てで見に行った子どもたちは、困惑したのではないか?と思ってしまう。
■スタジオジブリの名作は同時上映だった…『となりのトトロ』と『火垂るの墓』
今も語り草となっている組み合わせが、2本の不朽の名作『となりのトトロ』と『火垂るの墓』だ。どちらも1988年に公開されたスタジオジブリ映画なのだが、見る順番によっては精神的ダメージが凄いことは想像に難くない。
『となりのトトロ』は、サツキとメイという二人の姉妹が、“トトロ”という不思議な生きものに遭遇する体験をするといったファンタジックな内容だ。自然のなかで過ごす世界観、モフモフ感が魅力的なトトロやネコバスなど不思議な生きものたちとの出会い……感動的なストーリーも相まって、令和の現在でも人気の一作だ。
対して『火垂るの墓』は、一気に重い内容となる。第二次世界大戦の末期である昭和20年の神戸を舞台とした本作は、主人公・14歳の清太の「僕は死んだ」というショッキングなナレーションからはじまる。
戦時下で清太が幼い4歳の妹・節子を守りながら生きていく様子がリアルに描かれているのだが、空襲や母の死、困窮した生活、そして、栄養失調により二人は衰弱死してしまう……と、シリアスな物語となっている。
放映当時、どちらを始めに見るかは人によって違ったというが、どちらにせよ2作品の間で雰囲気のギャップがあまりにありすぎる2作品である。