漫画では、随所に作者の伏線が張り巡らされていることが多々ある。その伏線が巧妙であればあるほど、ネタバラシをされたときに鳥肌が立つほど感動するものだ。
とくに登場人物の“名前”は一度出たら変わるものではないので、ここに秘密が隠されていると、後から気づいたときの驚きもひとしお。今回は名前に伏線が隠されたキャラのなかから、“実は名前がペアになっていた”者たちを3組紹介していきたい。
まずは、原作:大場つぐみ氏、作画:小畑健氏による『DEATH NOTE』から。主人公の名前は夜神月(やがみライト)だ。デスノートを手に入れたライトは新世界の神になるのを目標に、“キラ”として邪魔者を次々と粛清していく。そしてそんなキラを追うのが、正体不明の世界的な名探偵・L(エル)である。
ライトのつづりについては原作単行本2巻冒頭にて、“Laito”や“Raito”ではなく、英単語の“Light(光)”であることが明かされた。“Right(正義)”ではないところが、本作における彼の立ち位置を暗示しているようにも思える。
そして、原作完結後の2006年に発売された公式ガイドブック『DEATH NOTE HOW TO READ 13』では、ついにLの本名が明らかに。彼の本名は“エル=ローライト(L Lawliet)”。法律(law)でキラを裁こうとするLの姿をほうふつとさせるのに加え、Lの名前にも“ライト”が含まれていたことに驚かされる。二人の関係は、対というよりは表裏一体だったのかもしれない。
続いては、篠原健太氏による『SKET DANCE』。とある高校で起こる困りごとの数々を、人助けを目的とした部活動“スケット団”のメンバーが解決していく学園コメディ漫画だ。
主人公はスケット団のリーダー“藤崎佑助”。スケット団はたびたび生徒会のメンバーと争うが、なかでも佑助と生徒会副会長の“椿佐介”は犬猿の仲にあった。しかしそんな二人が実は双子だったことが、コミックス10巻で明らかとなる。彼らは生まれた日に本当の両親を不慮の事故で亡くしており、それぞれがその事実を知らないまま、異なる養父母の元で育てられたのだ。
しかし二人が対となる関係であることは、名前のなかに伏線として張られていた。彼らの名前の一部にはそれぞれ“右”と“左”が入っており、後に“二人が協力して右と左で人を助けられるようになってほしい”という母の願いが込められていたことが明かされる。なお“佑”、“助”、“佐”、“介”という字には、すべて“助ける”という意味がある。
彼らが双子だと予想できていた読者は多くはないだろうが、スケット団と生徒会として、それぞれ違った立場から人助けをしていた佑助と佐介。真相を知った読者も、根底にある優しい心は同じなのだと思ったことだろう。以降どこか似た行動をとる彼らの姿には、見るたびほっこりさせられた。