■日本人にとって身近な“鬼”という存在
日本での鬼ごっこの起源は、平安時代以前から行われていた「追儺(ついな)」という鬼を追い払う儀式だとする説がある。ちなみに、これが節分の豆まきの原型とも言われているようだ。
ここからも分かるとおり、日本人と鬼との付き合いは長い。今でも毎年節分に豆をまいて鬼退治をするし、子どものころに「暗くなる前に家に帰らないと鬼にさらわれるよ」など言われた人も多いと思う。
『まんが日本昔ばなし』には、いったいどれほど鬼の話があったことか。現在アニメ放送中の大ヒット作『鬼滅の刃』(吾峠呼世晴氏)だって、平たく言えば鬼退治の話だ。さらに“鬼嫁”という言葉や、“鬼可愛い”など強調の意味で“鬼”を使う表現もある。
このように私たちの生活にはたくさんの“鬼”が出てくるが、その言葉は単に空想上の怪物の名前だけでなく、人間を襲う脅威そのものや、人智の及ばないものに対する恐怖や畏怖を表すものでもある。
その点、『地獄楽』で画眉丸たちを襲う未知の化け物も、まさに“鬼”と言えるだろう。文字通りの“鬼ごっこ”、それこそが私たちの文化や歴史に深く刻まれた要素であり、日本人の心に刺さる“黄金パターン”と言えるのではないだろうか。
以上、“鬼ごっこ”をテーマに人気作品『地獄楽』の人気の秘訣を考察してきた。原作の連載は既に終了したが、アニメは絶賛放送中だ。こだわり抜いた制作によって島の不気味さや過激なアクションシーンにさらに磨きがかかり、歌舞伎のようにド派手なテーマソング「W●RK」もめちゃくちゃにカッコいい『地獄楽』に、今後も注目していきたい。