話題のアニメ『地獄楽』の人気の秘訣は? 共通の敵と戦う“鬼ごっこ”は日本人の好きな“黄金パターン”なのか?の画像
『地獄楽』(C)賀来ゆうじ/集英社 (C)賀来ゆうじ/集英社・ツインエンジン・MAPPA

 今年4月からテレビアニメが放送中の『地獄楽』。賀来ゆうじ氏による原作漫画は、2018年から2021年までウェブコミック配信サイト『少年ジャンプ+』上で連載され、同サイトの看板作品として人気を集めた。

 本作の魅力は、美しく繊細な画風や、多くの魅力的なキャラクターが繰り広げる人間ドラマ、また仏教や道教をモチーフとした幻想的かつ不気味な舞台での冒険・ミステリー要素など、挙げ始めるとキリがない。しかしその主軸には、日本人が好む“黄金パターン”のようなものが見られるように思う。今回はその点を中心に、『地獄楽』の人気の秘訣について考察していく。

 

※以下には、コミック&アニメ『地獄楽』の一部内容が含まれています。ストーリーを解説するのが本記事の主目的ではありませんが、気になる方はご注意ください。

 

■一カ所に集められて共通の敵と戦うストーリー

『地獄楽』は、極楽浄土と噂される謎の島に送り込まれた死罪人たちと、彼らの監視役として同行した打ち首執行人たちが、不老不死の仙薬をめぐって戦いを繰り広げる物語だ。死罪人のうち仙薬を持ち帰った一名は無罪放免となり、誰からも二度と追われなくなることが約束されている。主人公・画眉丸もその死罪人の一人であり、忍びの里に残した妻にもう一度会うため、担当執行人の山田浅ェ門佐切と共に島に上陸した。

 蝶や花が舞う島は一見美しいが、奇妙で醜怪な化け物たちや、「天仙様」と呼ばれる未知の存在が住んでおり、上陸した人間たちを次々に殺していく。そのため、最初は互いに競合し合う立場だった死罪人たちも、また彼ら犯罪者とは相反する立場だった執行人たちも、やがて己の信念や生存をかけて共闘していくこととなる。

■“鬼ごっこ”は人類共通の“黄金パターン”?

 前述のような設定やストーリーは、奥浩哉氏の大ヒット作『GANTZ』を思い起こさせる。同作では、死んだはずの人たちがマンションの一室に集められ、転送されたエリア内で謎の怪物「星人」と戦う。戦いを経てキャラクター間には次第に協調性が生まれ、情報共有やチームプレイが見られるようになる。

 同様の内容は、近年テレビ番組でも人気だ。たとえば、採石場やテーマパークなどを舞台に、レーザー銃を使って鬼を倒しながらチームで生き残る『THE鬼タイジ』(TBS系列)や、ミッションをクリアして仲間を助けながらハンターから逃げ切る『逃走中』(フジテレビ系列)が挙げられる。

 これらの原型となっているのは、おそらく子どものころに遊んだ“鬼ごっこ”だろう。公園や校庭など特定のエリアに複数人が集まり、共通の敵である“鬼”から逃げる。

 基本ルールでは鬼に捕まった者が次の鬼になるが、“こおり鬼”や“ケイドロ(ドロケイ)”のように、特定の鬼に対してチームで協力して助け合うものもメジャーで、先に挙げた二番組や『地獄楽』『GANTZ』はこちらのタイプだ。

 こういった遊びは世代や国境を超えて世界中で見られるし、驚くことに餌付けされたニホンザルの間でも、鬼ごっこの基本ルールに近いタイプの遊びが観察されているそうだ。どうやら鬼ごっことは、人類にとってなかば本能的な遊びであるらしい。そう考えると鬼ごっこ的な要素には、人の興味を本能的にそそるものがあるのかもしれない。

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